ASAHI PENTAX KX 復活記 その3 です。
手に入れたKシリーズの中位機種である KX であったが、一点気になる問題があり修理をしていた所、一層悪い方向に向かう事となる。
前回までの経緯.....。
何故かフィルム巻き戻しクランク軸が斜めになっており、原因として曲がっていた軸受を修正しようとした所、あっけなく折れてしまった。
折れた部品について検討するも、強い力が加わる部分が故に、ある程度の信頼性を確保しながら、折れた2つの部品を繋ぐ術は見つからず。
部品流用元としては同じ KX が望ましいが、現存数が SP とは違い、それ程多くない機種である事から、 ES ES2 あたりも部品流用元として検討。
名古屋丸栄の中古カメラ用品大バーゲンセールで、部品取り機を探し ES の完全死亡品を、ちょっと高かったが1000円で入手。
果たして ES の巻き戻し軸受けで復活出来るのか? 以下は続きです。
< ES を分解し巻き戻し軸受けを取り出す >
基本電子部品以外の各部の構成は、ペンタックスSシリーズ共通なので、逆ネジに注意しながら簡単に軍艦部カバーを開ける事が出来た。
部品取り機とはいえ、破壊する事無く丁寧に作業をして、目的の巻き戻し軸受けを取り外す。
< KX の折れた部品と ES から取り外した部品を比較 >
下の写真の左がKX用、右がES用
・高さ方向は ES 側が1mm長く、ツバの部分も幅広い。
・高さ方向の全長の差1mmの違いが、巻き戻し軸全長にも1mm差として表れている。
・摺動ブラシが収まる部分の軸径も、KXが6mmに対しESが6.55mmと太く、摺動ブラシがはまらない。
・ESにはKXには無い加工(スリット)等がある。
・ダイカストボディへの取り付け穴ピッチは同じ。
・先端部のネジ径およびネジピッチは同じ。
検証した本人でないと、読んでいても内容が伝わらないとは思いますが、要するに 「部品は別物」 であり、そのままでの流用は不可という事に。
昔のペンタなので 「流用部品だらけ...」 と思っていたのですが、どうやら時代・世代毎に部品の細かな仕様が違っている様です。
そのままでは使えないものの、それでもESから取り外した部品を、加工する事でどうにか使用可能な状態になると考え、折れたKXの部品から寸法を拾って、それに合わせてESから外した部品を削ります。
一通り加工を済ませた結果としては、摺動ブラシが収まる部分の軸径を 6.55mm→5.99mm へ、ツバの部分を1mm削って、形状の一部に違いがあるものの、十分代用可能な部品にはなりました。
余談ですが削ってみて、材質まで KX=真鍮にメッキ ES=ステンレス との違いもありました。
<加工した ES の巻き戻し軸受けを KX に組み込み>
加工した ES の巻き戻し軸受けを代用部品とし、KXに組み込みます。
ただし、代用部品が故に、寸法や形状が全く同じでは無いので、本当に使用可能なのか?は、一旦組み込んでみないと分かりません。
ボディダイカストに代用軸受けを取り付けます。
3点のビスの取付けピッチ間は同じなのでここは問題無く組み込めます。
裏ブタ開放爪が入る穴の位置関係も問題ありません。
ISO感度設定ダイヤルの摺動ブラシを組み込みます。
軸径の寸法と長さについては折れた部品から拾って加工したので、こちらも問題ありません。
ISO感度設定ダイヤルの基板を取り付け、2箇所をネジ止めして固定します。
こちらについても、寸法を合わせて加工しているので問題はありません。
ここで一旦露出計の電池をカメラに入れて、電子回路の動作チェックを行います。
摺動ブラシを爪楊枝で回して、それに合わせて露出計も追従する事から、電気的には問題ありません。
組み込み忘れが無いか?目視でチェックし、最後に軍艦部カバー内部にある、電子基板の保護と絶縁用に貼られた大柄のモルトを剥がします。
剥がした後、再びモルトを貼る事も考えたのですが、最終的には今回は何も貼らず仮組みする事にします。
< 仮組立て復元作業 >
カバー取り付けビス3本を締めて軍艦部カバーを固定します。
続いて、シャッタ速度ダイヤルを取り付け、3点のイモネジを締めて固定します。
部品点数の多い巻上げレバーも順番に組み立て、巻き上げレバーを取り付けた所で一旦巻き上げ動作チェックと、シャッタボタンを押してのシャッタが切れるか確認を行います。
最後にフィルム巻き戻し軸部分に取り付ける、ISO感度ダイヤルを取り付ける訳ですが......ここに来て取り付けられない問題が発覚する事に....。
ES から取り外し加工した代用部品の巻き戻し軸受けは、ネジの径やピッチは KX の物と全く同じなのですが、ネジを上面から見た際の形状が、丸い形をしています。
それに対して KX のネジ部分は、左右の側面部分を削り落として小判形にしてあり、この小判形の形状とISO感度ダイヤルの中央取付け穴の、小判形形状が合致してダイヤル内周部を固定している事が判明。
形状的に全く同等では無いが故に、どこかで問題が起きるとは思っていたのだが、最後のISO感度ダイヤルが形状の不一致で取り付けられないというのは、全くの想定外であった。
赤いマジックでネジ部分の加工する方向および深さを印し、折角ここまで組み立てたが、再度分解して代用部品の巻き戻し軸受けを取り出し。
ゴールは直ぐそこに見えているものの、もう一歩の所で寸法的な部分で問題が発生し、さらに一段の加工をすべく、KX復活は次週へ持ち越し.......。
......つづく。