コジ・ファン・トッテは最近では(と言っても2013.8.19)のミラマーレ・オペラのを観て以来久しぶりです。というか、この話も私的には好きじゃなくて(恋人を騙す話です)、オペラ・ブッファ(喜劇)と言うけどちっとも笑う場面が無い歌劇なんです。歌手が良ければ行くという「歌を聴きに行くだけの歌劇」
今回発見がありました。「歌手によってこれだけ印象が変わるものなのだ」を実感しました。
まず、フィオルディリージの針生美智子さん。
東京オペレッタ劇場の公演でジェロルスタンの女大公2013.6.8高輪区民センターで一度だけ見ましたが、こんなに美声で歌が上手な人とは知りませんでした!凄いです。東京オペレッタ劇場のときはシーツを被ったような変な衣装でつまらないギャグを言わされたりしていて歌手としての魅力を全然感じなかったのに、この公演ではモーツァルトが得意と思わせるようなそれは素晴らしい歌唱が次から次から出てきて感動しました。こんなに上手な人だったんだ、と思わず呟きました。
しかも「長女」のキャラクタがよく出ていた。真面目っぽくて、なんだか訳のわからないままに他の男にいいようにされてしまう、という「普通さ」がよく演じられていた。演技も歌も上手な人だったんですね。使い方でこんなに印象が違うものかと思いました。使い方の他に冒頭に書いた「歌手によってこれだけ印象が変わる」のもこの人のことで、ミラマーレ・オペラのときはフィオルディリージは湯浅桃子さんがやったんですが、こちらも負けず劣らず美声で上手な人ですが、フィオルディリージの印象が全然違います。今回の針生美智子さんは、今書きましたが「フツーの女性が訳がわからないまま男に取り込まれていく」というフィオルディリージでしたが、湯浅桃子さんの場合は「こんなに純情そうなおよそ浮気なんかと縁が絶対無いような人が他の男とセックスしてしまうんだろうか」と、歌唱を聴いているだけでドキドキしてしまったものです。フィオルディリージは名前が同じでも別人ですね。ここまで印象が変わるものなんだ、を実感しました。どちらも素晴らしい演技でした。
ドラベラ。堀万里絵さん。
妹の方が背が高くて活動的というのはウチの娘たちとまったく同じなので人物設定がリアルに感じられました。だいたい演出自体が「現代」になっていて、女性の服装もカラフルなワンピースだし、だからといってこういうのを「読み替え」とは言わないだろう、と思いました。「演出にオリジナルに忠実か読み替えかの区別は無い」というのが私の考えですが、こんなに現代の人間たちと距離がない演出も分かりやすくてとても良いです。で、堀万里絵さん。一番多く何度も見ている歌手のひとりですが、本領はオペラだなと思いました。コンサートで見ているとひとりだけ目立ってしまって「堀万里絵とその仲間たち」的に見えてしまうんですが、オペラだと演技がつくから正に「劇場で映える人」なんだと気がつきます。同行の
も「ここがこの人のいるべき場所なのね」と言ってました。そもそも私がこの人のファンになったのは美人だからではなくてコンサートの時にハバネラを歌いながら私のところまで来て私の肩に手を置いて歌ったからなんです。(笑)こういう大胆な演技を歌いながらできる日本人は珍しい。そういう演技力もあるし、存在感もあるし、和風の顔立ちで背が高いとなると、あちらの方でブレイクする要素を持っている数少ない日本人です。世界に出て行っても良い人だと思います。デスピーナ。鷲尾麻衣さん。
ひさーし振り。病気もされてご無沙汰でしたが元気な歌声を久しぶりに聴きました。この方を初めて見たのは同じこのホールで「こうもり」のアデーレを演じた時ですが、あれほどオペレッタで笑ったことはありません。綺麗な人なのに「この人は芸術のためには自分を捨てる覚悟がある人だ」と分かって一編でファンになりました。それを今回再現してました。(笑)
歌も上手。声量もあるし、コミカルな演技もできるし、病気を克服したちからでもっと伸びて欲しいです。
このデスピーナも、歌手による違い、というより今回は「演出による違い」ですが、実感しました。ミラマーレ・オペラのときはデスピーナは山口佳子さんがやったんですが、あの人も弾けてましたが、あの時は網タイツでしたから。。。松山郁雄さんにさせられたんでしょう。あのセンスは過激でした。しかし、デスピーナというのは「奥深い人間性」を表現できなければならない難しい役ですが、どちらのデスピーナもそれは成功していました。配役の勝利でしょう。二人とも東京藝術大学卒だそうで、「藝術のために自分を捨てる」事を教える良い学校なんだろうと思いました。(違うかもしれません)
男性歌手については割愛。上手でした。
本日もあるそうですが、チケットは難しいでしょう。
最後までお読み戴き有り難うございました。
■ 追記
全幕がYouTubeに公開されました。いいなぁこういうの。ファンが増えるでしょう。

