ミラマーレ・オペラ(主催団体)は、2011年のみなとみらいで観た「こうもり」が非常に面白かったので、以来注目しています。
特に主宰者の松山郁雄さんのコメディのセンスが抜群で、日本にはなかなかいないタイプなのが好きです。
今回は湯浅桃子さんが出演するということで楽しみにしていましたが、お二人とも役柄にぴったり嵌っていて感動しました。特に湯浅さんの最後まで衰えない素晴らしい声量と声のコントロール、この人は日本のソプラノのトップランナーの一人と思います。容姿も優れているし(写真参照下さい)、フィオルディリージという純真無垢な乙女が婚約者以外の男の誘惑に抵抗できずに純潔を汚してしまうという、演技も歌唱表現も要求される役柄を見事にやってのけて「こんなに奇麗な女性も人間なんだなぁ」という、モーツァルトのいつもの主張をとてもよく体現していました。その乙女心が揺れていく過程を見ながら、ドキドキしてしまいました。今まで、ガイジンの立派な体躯のソプラノがいくらこの役をやっても「そういうもんだろうな...」と思ったものですが、こんなに危ういフィオルディリージ(長い名前だ...)を演じた人を見た事がありません。
しかーし、初めて見ましたが山口佳子さん、この人が素晴らしかった。(デスピーナ役)
デスピーナというのは、私が説明するのもなんですが、ひとりで何役もやりますがそれは「人間の奥深い多様性」の象徴なんです。いろんな顔をもっているが、その奥底にあるのは「真に人生を生きている人間」であり、仮面を剥がされるような他の四人に比べてずっと人間を知っている人生の達人なのだろうと思います。それは、自身に奥深い多様な「引き出し」を持っていないと演じられるものではない。歌がうまくてその上コミカルな演技もこなす。「芸術の為にはすべてを捨てる覚悟」まで兼ね備えている声楽家は希少です。よっぽどアタマが良くないとできないと思います。プロフイールを見ると「東京藝術大学、大学院卒」とあります。納得しました。
ミラマーレ・オペラにはいつもそういう「歌も抜群だがコミカルな演技も素晴らしい」という声楽家がかならず出てきます。それは主宰者の松山郁雄さんの製作意図の中に大きな位置を占めている事なのだろうと思う。
素晴らしかったです。本日と明日(2013.8.31と9.1)もあります。当日券も少しだけあるようです。
お薦めします。
ミラマーレ・オペラ HP
