世の中…

つぎの日には

がどうなってしまうものやら…

さっぱり見当がつかない!


このごろのように

科学が進んだりすると

なおさらのこと…


エヌ氏は

ある研究所に勤めている…

ごく普通の人間。


ある朝…

いささか寝坊をした!

眠そうに片目をあけ…

時計を見ながら言う。






「やれやれ…

つい寝過ごしてしまった!

先生…怒るかもな…」


寝ぼけ声でテレビをつける…

コマーシャルのが流れてきた…



『やい!

そこのおいぼれや

くたばりぞこないの野郎どもっ!

この薬を買いやがれっ!

この一粒を

てめぇのその

馬鹿みたいにあけた

くせぇ口に放りこみゃあ…

身体んなかに

くそぢからのひとつも

湧いてくるってぇもんだ…!』



エヌ氏は

がいっぺんにめた!


画面を見ると

総合ビタミン剤の

ビンが映っている…






なるほど!


ついにこういう

ショッキングなコマーシャルも

出現するようになったのか…?


そのうちニュースとなり

アナウンサーが喋っている…






『タマンチョス共和国の親分が…

子分を引き連れ

空港に来やがった!

すると…

そのいいぐさがいいや…

くそ最高な国だなっと

こうぬかしやがった…!』






続いて天気予報になる…



『…高気圧だなんて

なまいきな野郎が

はり出していやがる!

そらみやがれ…

低気圧もやってきやがって…

ふん!だがな…

こんな高級な話は…

てめぇらとんちきには…

わかるめぇ!

はやく言ゃあ…

おてんとさまは

カッカしてぃや〜がるが

午後になりゃあ

ところにより

にわか雨なんて

具にもつかねぇもんが

降りやがるかもしんねぇ…!

てめぇらっ

ボロ傘でも持って

表ぇ出たほうが…

気が利いてるってもんさ…!』






エヌ氏は…

しばらく唖然としていたが

仕事を休むわけにいかないので…

出勤することにした!


外に出たとたん…

隣の家の夫人と顔があう…






「よう!隣のトンチキあんちゃん!」



エヌ氏は…

辺りをみまわすが

ほかに誰もいない。


「や〜だあ〜た

ねぼけ面で

キョロキョロしてんじゃねぇよ!

あほたれっ!

まぁしっかりやんな…」


この奥様…

普段は上品過ぎる言葉遣いなのに

これはまたなんという

男だかなんだかわからない

口調になっている!

それでいて

かくもぞんざいな話しぶりなのに

身なりや動作は

普段と変わらず

表情は…にこやかなのだ!

エヌ氏はうすきみ悪くなり

急ぎ足で立ち去る。


駅前の交番では…

のいい老紳士

警官に道を尋ねている。



「やいポリ公!

区役所に行く道を教えやがれ!

この税金泥棒めがっ!」






「いいか!

このくそったれの

町人ふぜいめっ!

てめぇの目が

ふし穴でなけりゃあ…

あそこの

うすぎたねぇビルが

見えるだろう?

あれがそうだ!

とっとと…うせやがれっ!」



やれやれ…

温暖化猛暑続きだったせいで

みんな頭が

おかしくなったのだろうか…?


エヌ氏はげるようにして

研究所に向かった!


虎の尾を踏みつける思いで

アール博士にあいさつする…



「先生…おはようございます!

どうも遅くなりまして…

まことに…

わたくし至らぬことで…

きょうえつしごくに…」



「まぁ…そう恐縮するな…!

遅刻ぐらい…わたしもあるさ!」



博士の穏やかな口調を聞き

エヌ氏は…ほっとする。



「先生…これはいったい

どういうことでしょう?

目が覚めてみると

世の中が一変してしまいました!

誰もかれも口のきき方が…」



「ああ…もうしわけない…

その原因だが…

実は…ここにあるんだ!」



「ここですって…?」



「きみも知ってのとおり

我々はここで

各種の細菌の研究をしている。

その一種が

うっかり外部に

流れ出てしまったのだ!

ネチラタ菌という…!

この菌は伝染性が強く…

あっという間に広がるんだ」



「か…感染したら…死ぬんですか?」



「そんなに危険なら

もっと厳重に取り扱うよ!

完全に人畜無害だ…

無害だが…

言葉遣いがぞんざいになる…!」



「そんな細菌があるかぁ〜!

く…くそったれ…!

ああ…すいません…?

僕も感染して…

しまったのかなぁ…?」



「いや…

わたしときみは

感染しないよ…!」



「えっ…

そうなんですか?」



「ああ…!

なんせ免疫が…

ついているからね!

くそったれって…

言ったか?」



「そ…そんなことより…

どうするんですか?

元に戻らず

ずっとこのままなんですか?」



「いや…元に戻す方法はある!

これと逆の症状を示す

タラチネ菌をばらまけばいい!」



「では…さっそく…?」



「いや…まだ出来ていない…」



「えっ…?」



「心配するな…

一日もあれば完成する!

今日のところは…いい機会だ!

街に出て…

ネチラタ症のデータを

集めてきてくれ!」



「…はい…」






「ところで

さっき…

くそったれって…

言わなかっ…」



「いってきま〜す!」



エヌ氏は…また街に出た!


こんどは事情がわかって

いくらか安心だ。


お寺の前を通りかかると

葬式をやっていた!

喪服姿の女性が

涙に咽びながら

弔辞を述べている。






「…野郎は…

いいくそ野郎だったが…

ふんづまりが悪化して

ポックリくたばりやがった!

あばよ…まぬけ!

迷わず成仏しやがれってんだ…」



ケーキ屋の前を通りかかると

エプロン姿の女性が

試食を勧めている。



「街ゆくゴミども!

うすらハゲ店長が

こきたねぇ手でこねくり回した

新商品でも食らいやがれ…!

そらっ!

どうだ…うめぇか?

握りつぶし

シュークリームの味は?」






デパートに入る。

エレベーターに乗ると

若く美しい案内嬢が言う。



「おう!懲りもせず

ぷらぷら来やがったな…?

暇なポン助どもっ!

途中…何階で降りたいのか

言ってみやがれっ!

三階は…

ガキどものガラクタが

置いてあらぁ!

四階は…

おっさんの猿股…」



五階で降りると

そこは電化製品売り場だった。



『たまちゃむで御座います!

ご機嫌いかがですか?

う〜ん…

わかりかねますわ…

おほほ…

では失礼致します…』






テレビでは

若いギャルタレントが喋っていた。



「おやっ?

最近の若い娘にしては…

上品な言葉遣いの

ギャルタレントだな?

ははぁ…!

さては博士の

タラチネ菌が完成して

ばらまいたのだな!

完成には

一日かかると

言っていたはずなんだが…?

ま…なんにせよ一安心だな!」



すっかり元にったと

安心したエヌ氏は

すっかり喉が乾いたので

近くのバーに入った。



「こんにちは!

もしお手数でなかったら

ビールでも飲ませて頂きたく…

何とぞ宜しく

御願いつかまつります…」



今まで散々

ぞんざいな言葉

聞いてきた反動のせいか…

エヌ氏は

ついつい丁寧すぎる口調

なってしまう。



「こ…これは…

これはお客様…

こんな事を申し上げては

無礼の極みでは

御座いましょうが…」



エヌ氏は何気なく

店員の顔を見た。



「…御座いましょうが…

そのような…

お口の利き方をなさいますとは…

まことに以って…

遺憾です…!」








店員は…

丁寧な口調なのだが…

目を吊り上げ…

歯をむき出し…

からだを震わせ…

ただ事ではないといった

表情をしている!

他のテーブルの客も

エヌ氏に

非難の視線を集中させている!


その時…

店内のテレビで

さきほどの

ギャルタレントが喋る…






『たまちゃむで

御座いますわよ〜♪

皆さま〜!

盛り上がらナイトプール

ぱしゃぱしゃ〜!

くたばり遊ばせ〜♪』



エヌ氏は…

はっとなった!


しまった…!

このギャルタレント

普段は毒舌

とても上品とは

程遠いキャラ…!

つまり…まだ…

世界は元に戻っていない…?

ということで…

ネチラタ症の人に向かって

丁寧な口を利くということは…?

このうえなく失礼なこと…

すなわち…

ネチラタ症の人から

丁寧な口調で

しかけられた

ということは…?









「お客さま〜?

オモテに

出て頂きまして…

前歯の2〜3本

頂戴つかまつり…」










ボコ〓たまこ〓ボコ





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