感心してるんだよ!』
「よしてくださいよ…
照れくさい…」
『それにしても…
酷い火事だったねえ…』
「ええ…まったくでさあ!」
『おまえさんときたら
手前の家は後回しで…
お稲荷さまの御社を
建て直すんだからねえ
意外にも信心深いんだね』
「いやいや…
あっしは別に
信仰深いとか
そういう意味じゃねんで…」
『おや?
だったら…
どういうわけなんだい?」
「いえね
これ…
ご隠居だから
言うんですがね…
誰にも…
言わねえで貰いてえんですが」
『大丈夫だよ!
棟梁とあたしの
仲じゃないか』
「実は火事の…
三日前の事なんですがね。
あっしが寝ていると…
夢の中に
年老いた狐が出てきて
お前を宮大工と見込んで
頼みがある…!
と…こう言うんですよ」
『ほう…お稲荷さまじゃな!』
「近ぇうちに
この辺りで大火事が起こる!
その時
わしの住んでおる
稲荷神社も…
焼け落ちてしまうのだが
おそらく
誰も…
自分の家の事で
手一杯で
わしの所など
気にも留めぬだろう…」
『うむ…たしかに
その通りじゃったからのぅ!』
「この冬は
とくに寒く…
住む所がなくては
わしもツライ…!
そこでお前に…
社を建て直してもらいたい」
『なるほどね!
それで引き受けたって訳だ…』
「いや…
あっしゃそん時…
狐に
言ってやったんですよ!
相手が誰であろうと
あっしゃ…
金にならねえ仕事は
やらねえよっ!てね…」
『こら…!
神様に
なんてぇこと言いやがる…』
「するってぇとね
狐のやつ
わしは金は持っておらん…
そのかわり…
立派な…いや…
今のと同じ社を
建ててくれたら
おまえの願いを何でも
ひとつだけ叶えてやろうってね」
『ふむ…それで
なにを願ったんじゃ?』
「着物が
透けて見えるように
なりてぇって…!」
『馬鹿だねぇ…お前さんは?
せっかく願いを
叶えてくださるってぇのに…
そんな
ケチな願いがあるもんかい…!』
「ご隠居だって
いい女がいたら…
裸が見てぇって思うでしょ?
あっしは
それが…いつもなんでぇ!」
『まぁ男とは…
そういうものなのかもしれないな』
「いや
しょうじき言うとね…
あっしは
てっきり…
狐に化かされてると
思ってたんですよ…」
『狐もなにも
お稲荷さまだって狐だい!』
「そうなんですよねぇ…
それでその後…
本当に大火事で
みんな焼けちまった…!
もう驚いたのなんのって…
これで
約束を破ったら
願いを叶えてくれないどころか…
どんな罰が当たるか
分かったもんじゃない…」
『まぁ約束しちまったからねぇ…』
「慌てて建て直そうと
思ったんですが…
あの火事で
材木が値上がりしちまって…
あっしの手持ちの金じゃ
とても足りない。
仕方ねぇから
あちこち歩き回って…
焼け残った材木を拾い集めて…
結局…
元の半分の
お社しかできなかった…!」
『まぁそれは
仕方のないことだ。
それでも
お稲荷さまは
お許し下さろう…』
「それから
何日かして…
また夢の中に
狐が出てきましてね…
ご苦労だった…!
約束どおり
願いを叶えたいが…
社が半分だったので
願いも半分しか
叶えられないが
それでいいかっ?てんでぇ…」
『なんだい?半分とは…?』
「あっしは
それで構わねぇって言った…」
『それは
どういうことなんだい?
着物が
うっすら透けるのか?
それとも
上半身だけ見えるとか?
下半身だけとか…うひひ』
「やだなぁ…ご隠居…
何を…
助平そうに
想像してるんです?」
『おお…済まねぇ…!
あたしとしたことが…
で…
透けて見えるように
なったんだろ?』
「ご隠居…
ちょっと立ってみて下さい!
おや…
右の乳首の横に
ホクロがありますね。
へその上にアザがある。
ほう…!
ふとももの付け根に
傷跡があらぁ…!」
『およしよ…
変なところを見るのは…』
「へへへ…
こりゃ…すいませんです…」
『ちゃんと
透けて見えているじゃないか?
半分とは
いったいどういうことなのか?」
「へぇ…
女は…みんな…
服を着て…みえるんでさぁ…」
#嬉しい人もいる
残〓たまこ〓念