メークインは朝から
ウキウキ気分で歩いていた。
今日は憧れの先輩である
ニシユタカと一緒に
農協まで軽トラで
ドライブデートするからだ。



ニシユタカは
その端正なフォルムと
甘いマスク
煮崩れのしにくさによって
多くの女子から
絶大な支持を受ける
人気のじゃがイケであり
メークインもまた
ニシユタカに対して
恋の新芽が芽生えていた。

けれど…
こんな想いが
通じるわけがないと
メークインは諦めていた。

なぜなら
メークインとニシユタカは
男同士だったからだ。

いつもニシユタカの周りを
女子達が
芋の子を洗うように
集まっているのを遠くから
ただ眺めているだけの恋だった。

そんなメークインの視線に
ニシユタカは気付いていた。
実は彼もまた
メークインに恋をしていたのだ。



彼から来ないのなら
自分から行くしかないと
そう思ったニシユタカは
メークインに告白した。

突然の出来事に戸惑い
ガレットからかわれて
いるのかと疑った
メークインだったが
彼の想いが本物だと
気付いたとき
燃え上がった恋心は
芋づる式に
二人は同性という状況を
ものともせず
イモくさい交際を
スタートさせたのだった。

恋芋同士になって初デート。
メークインが畑で
愛する芋を待っていると
キンピラ男たちが
農道の向こうから
ゴロゴロと転がってきた。

見覚えがある
ゴロゴロ具合だ。
あいつは
この界隈じゃ有名な
ゴロつき男爵!



『おう!
メークインじゃねえか?
ポポポ…
こんなところで何やってんだよ。
畑なんかで
ポテっとしてねえで
俺達と
フリフリして遊ばねえか?』


「ごめん…
今日は…
大事な用事があるんジャガ…」


『ポポポ…
どうせニシユタカのやつを
待っているんだろ?
あいつは来ねえよ…
あいつの赤いトラクターの
タイヤをズタズタに
してやったからな!』


「言ってる意味が…
わからないんじゃが?!」


そのとき
男爵が引き連れた
イモ男たちが一斉に
メークインの身体を拘束し
メークインは
身動きが取れなくなった。


「お、おい男爵!
これは一体…
何のつもりジャガ?」


『何って?
決まってんだろ!
お前を美味しく
料理してやろうってのさ。
カレーか?
シチューか?
肉ジャガか?
ポポポ…
俺は昔から
お前が好きだったんだ。
その瑞々しい色合いに
程よい凸凹具合
お前のことを考えるだけで
俺はもう
カリッカリの
フライドポテトに
なっちまうんだよっ!』


そう言うと
男爵は男たちに命令し
メークインをまるで
マッシュポテトにするかのように
ぽてっと
地面へと押し倒させた。


「くそっ!
やめるじゃが!
こんなことすると
ニシユタカが
ただじゃすまさないん
ジャガらね!」


『ポポポ…
誰も来やしねえさ。
これはフカシじゃ無えぞ
俺は腐った
フカシ芋なんかじゃねぇんだ!』


男たちの魔の手が
メークインへと伸び
その皮を強引に剥がしていく。



「やめてジャガ…
脱がすんなら
ピーラーを使って
欲しいんジャガ…」


『ポーッポッポ!
そう嫌がるなよ。
ポポポ…
すぐに気持ちよく
ヌイてやるぜ…
お前のアクをなっ!』


「悪はお前のほうジャガ!
ニシユタカ…
助けてくれジャガ!」


『お前さては…
新じゃがだな?
ポポポ…
興奮しすぎて思わず
先走りポタージュが
出ちまいそうだぜ♪』


抗うメークイン。
しかし
男たちはビクともしない。
そのうちに男爵の手によって
メークインのジャガリコが
ニョッキとさらけ出される。


『お前…
新ジャガのくせに…
こんなに立派な
サツマイモじゃねえか!
ますますたまんねえぜ。
俺の石焼き芋は
もうアツアツだぜ!』


「ふんっ!
どこが石焼き芋だ?
せいぜい干し芋じゃないか!
ボールは
コロッケにも
満たないジャガ!」


メークインは
強がりを言ってみせた。


『この野郎…
俺がちょっと
スイートポテトな顔してたら
調子に乗りやがって!
これでもまだ
そんな強がりが言えるのかなっ?』


男爵は懐から
キラリと光るものを
取り出した。


「そ…それは…
ハンドマッシャーじゃが?」


『マッシュマシュの
ギッタギタにしてやるぜ!』


男爵の
ポテトマッシャーが
メークインに
スマッシュする。
あぁ…
こんなやつに
調理されたくはない。
それなのに
メークインの身体は
少しずつ
反応を示していった。


「ブサイクな
イモ野郎めっ!
僕に触っていいのは
ニシユタカだけだ!」


『ポポポ
せいぜいほざいてろ。
上の口では
そんなこと言っていても
下のサッポロポテトは
もうこんなに
バーベキューじゃねえか?』


このままじゃ
僕は本当に
じゃがバターに
なってしまう?


『おいおい?
こいつ…
吹いちまうんじゃないか?
とんだ粉吹き芋だぜ!
ポーッポッポッポ!!」


まるでニシユタカを
裏切っている気持ちだった。
こんなゴリライモに
好き勝手されるのは嫌だ。
頼むニシユタカ
早く助けに来て―!


『もう出そうなんだろ?
ガマンしてんじゃねえよ
自分の身体に正直になって…
とろっとろのデンプン
マッシューって
出しちまいな!』


次の瞬間!


爆音とともに
畑の中から
一台のコンバインが
飛び出してきて
男爵たちを
次々と煮っ転がしていった。


《おどろき!芋の木!山芋の木!
煮物に!フライに!チップスに!
やって来い来い!大悪党!
カーネリングポテパーンチ!》


『ポポポぐわぁ!
覚えてイモー!
ベニ~アカ~リ~!
(はひ〜ふへほ〜的な?)』


《俺のメークインに
手を出しやがって!
ひと〜つ…
カレーのルーをすすり…
ふた〜つ…
不埒な煮崩れ三昧…
みっつ…
醜いお前ら全員…
無人販売所行きだぜっ!》


コンバインから降りてきたのは
ニシユタカだった。


「ニ…ニシユタカぁ!」


《大丈夫か?
メークイン!
ああ…こんなに
悲惨な姿にされちまって…
あいつら…
ニクいジャガー!》


「ううん…
来てくれるって信じゃが。
嬉しんジャガ?
あれ?おかしいな…
目からヴィシソワーズが…
止まらないジャガー!
ポテッポテッと…」


《剥かれてるからさ…
剥かれてるからさ…》


「いーもん
いーもん…
やっと…
ニシユタカと
ごった煮じゃが…」


《俺の…
種芋になってくれないか!》


「いっぱいいっぱい
小ジャガ作りたい…じゃが♡」


メークインと
ニシユタカは抱き合い
二人で愛の二毛作を誓うのだった。



そんな二人の姿を
見つめる目があった。



ドイツ人…
インカルージュだった。



「あんたに
ニシユタカは
渡さない…
グールテンイモルゲン〜!」




次回…
めざめたインカの
出るか
ジャーマンスープレックス!

君のコガネに…
おじゃがするぜっ!m9(*´ω`*)

♪~おっじゃが
じゃがじゃが~
おじゃがいけ!





続き〓たまこ〓ませんw





【同時上映】

〜ふたりはデラウェア~

グレープ王国を奪還せよ!



王国からさらわれた
ぶどう姫を救出する為
デラウェアとなった
女子高生の
タネナシと
シャルドネのふたりは
クリスチャンディオール国の
魔王キョホウと対峙していた。


「きょほほほほ!
よくここまで辿り着いたな
デラウェア!
ふたりとも踏み潰して
ボルドーワインに
してくれるわっ!」


『そうはさせないわ!
食らえ必殺…』


「きょほほ!
あなたたちの必殺技?
無駄無駄無駄無駄!」


『ふたりはデラウェア!
闇の力の下僕たちよ!
とっととお家に帰りなさい!
ウザいのウザいの飛んで行け!
月に代わってお見知り置きをっ!
食らえっ!
デラウェアオープンマイハート!
花開け大地に!未来を照らし!
羽ばたけ空に!勇気を運べ!
光の使者!輝く命!
輝く金の花!天空に満ちる月!
煌く銀の翼!大地に薫る風!
大いなる希望の力!
想いを咲かせる奇跡の光!
情熱の赤い炎…』




「えっ…だっる~!
嘘でしょ…
ちょっと待って…
あんたたち…
その決め台詞を…
まさか…最後まで…
言うつもりじゃないよね?」


『…はじける葡萄の香り!
青いバラは秘密の印!
ピンクのハートは愛ある印!
もぎたてフレッシュ!
ホワイトハートはみんなの心!
羽ばたけフレッシュ!
ブルーのハートは希望の印!
つみたてフレッシュ!
イエローハートは祈りの印!
とれたてフレッシュ!
真っ赤なハートは幸せの証!
うれたてフレッシュ!
大地に咲く一輪の花!
海風に揺れる一輪の花!
光の心と光の意思!
全てを一つにする為に!
聖なる泉を汚す者よ!
あこぎな真似はおやめなさい!
希望の力と未来の光!
華麗に羽ばたく5つの心!
Yes!タカスクリニック!』



「院長…関係なくない?
てか…なっが!長い長いっ!
寿限無ジュゲムより長いわっ!
あんたたち本気で
ワザ出す気ある?
何?これ劇場版なの?
オールスターバージョンなの?
エグいて〜!
11時に友達と
ランチ約束してんだけど?」


『デラウェアの美しき魂が!
邪悪な心を打ち砕く!
闇の呪縛に囚われし者達よ!
今その鎖を断ち切らん!
希望の力よ光の意思よ!
未来へ向かって突き進め!
光の意思よ私に勇気を!
希望と力を!
ルミナスハーティエルアンクション!
みなぎる勇気!溢れる希望!
光り輝く絆と共に!
エキストリーム!ルミナリオー!
大地の精霊よ…
今!デラウェアと共に!
奇跡の力を解き放て!
精霊の光よ!命の輝きよ!
希望へ導け二つの心!
夢見る乙女の底力!
受けてみなさいドリームアタック!
純情乙女の炎の力!
輝く乙女のはじける力!
大地を揺るがす乙女の怒り!
岩をも砕く乙女の激流!
夢と希望の力と共に!
グレープの光よ!今ここに!』



「もう〜〜〜ええて〜〜〜〜〜!
しんどっ!
なにしてんねんっ!
技の決め台詞に
どんだけ尺使ってんねんっ?
常識の範囲ってもんがあるやろ?
別に今…攻撃してもいいんやでっ?
喋り終わるの待つ
義理はないよってに!
てか…本当に…マジで…
勘弁してつかぁさいっ!
めっちゃ疲れて来た~!
お家に帰りたいよ〜!
アタマ痛い…アタマ痛い…
何か具合が…
ごっつ悪うなってき…」


『…邪悪な心を包み込む…
薔薇の吹雪を咲かせましょう!
希望の光!情熱の光!
はじける光!安らぎの光!
知性の光!五つの光に!
勇気を乗せて!
煌く薔薇を咲かせましょう!
希望の!赤い薔薇!
奇跡の青い薔薇!
伝説の力を今一つに!
届け愛のメロディ!
響け希望のリズム!
癒せ祈りのハーモニー!
歌え幸せのラプソディ!
吹き荒れよ幸せの嵐!
クローバーボックスよ!
私達に力を貸して!
想いよ届け!
集まれ花のパワー!
花よ輝け!花よ煌け!
集まれ二つの花の力よ!
溢れる希望に勇気を乗せて!
光輝く未来に届け!
あつあつごはんでみなぎるパワー!
おいしい笑顔で満たしてあげる!
ふわふわサンドで心にスパイス!
分け合うおいしさ焼きつけるわ!
きらめくヌードル
おいしいの独り占め許さないよ!
ジェントルにゴージャスに
咲き誇るスウィートネス!
食卓の最後をこの私が飾ろう!
悪いの悪いの飛んで行け!
デラウェア
ラブサンシャインマスカットー!』





魔王キョホウは死んでいた。






疲労による老衰であった!





武〓たまこ〓道