マッドマックスのお陰で、「輸血袋」と言われているO型の血液ですが、
実は「誰にでも輸血出来る」訳ではありません。

そもそも「血液」には「赤血球」と「その他の成分」があるのはご存知かと思います。
「白血球」や「血小板」等は有名ですよね。
この「その他の成分」をまとめて「血漿」と言います。
正確には、血液が固まらない処置をしているかどうかで「血漿」と「血清」で異なります。
一般にはヘビ毒やハチ毒などの処置などで「血清」と言う言葉を聞いた事があるでしょうから、
敢えて「血清」で統一します。

赤血球には「A型抗原」「B型抗原」が、血清には「抗A抗体」「抗B抗体」があります。
「A型抗原」と「抗A抗体」、「B型抗原」と「抗B抗体」がくっつくとどうなるか。
「抗原を持つ」赤血球が固まって沈殿(凝集)したり、赤血球が壊れたり(溶血)します。


A型の人は、赤血球の表面に「A型抗原」を持ち、血清中に「抗B抗体」を持っています。
B型の人は、A型の人とは逆に、赤血球の表面は「B型抗原」を持ち、血清中に「抗A抗体」を持っています。
じゃあ、AB型の人は?と言うと、赤血球の表面に「A型抗原」と「B型抗原」の両方を持っています。
と言う事はと、血清の側には、「抗A抗体」「抗B抗体」の両方が無い、と言う事です。
もしAかBか、どちらかでも抗体があると、AB型の人の赤血球は固まったり壊れたりしてしまう訳です。

そして、問題のO型。
O型の赤血球の表面には、「A型抗原」も「B型抗原」も持っていません。
ですが、血清側に「抗A抗体」と「抗B抗体」を持っています。

このO型の血液を、そのまま他の血液型の人に輸血するとどうなるか。
「入れた分の血清が、入れられた人の赤血球を固めたり壊したりする」んです。
つまり、「供血者と受血者の、赤血球と血清の量的なバランスが同じだとすれば、入れた分と同じ量の赤血球が壊れる」訳で、
これでは、輸血する際の一番の目的「赤血球の補充」に対して、全く意味が無い事になります。

さて、じゃあどうすれば良いのか。
先の文章の中にヒントになる部分がありますが、輸血の一番の目的は「赤血球の補充」です。
つまり、「赤血球と血清がそのままの血液(いわゆる「全血」と言います)」を輸血するのではなく、
「赤血球のみを輸血する」事で、「A型の人にもB型の人にもAB型の人にも輸血する事が出来る」のです。

とは言え、全血から赤血球だけを取り出す(「血球を洗う」と言います)のは、結構な手間がかかります。
当然、現代の日本の医療であれば、そう難しい事ではないですが、果たしてマッドマックスの世界ではどうでしょうか。

その先の話は、マッドマックスの映画を見てからにしたいと思います。