さて、国家公務員試験の障害者選考も大詰めですね。

明日で試験期間が終了となりますが、以前にもブログで触れたように、ネット上で結構賛否両論が巻き起こってます。

 

これは健常者の官庁訪問を多少アレンジして持ち込んだものなのですが、そもそも一般的な「国家公務員採用試験」のメカニズムを知らないで批判を展開するのと、知った上でどうあるべきかを頭の体操として考えるのでは、同じことを言っていても趣旨が違ってくると思いますので、私なりに簡単に比較をしながら述べて行こうと思います。

あくまで聞いた話(や推測)なども多分に含まれており、一個人の意見でありますので、「こういう意見もあるのだな」程度に読んでいただければ幸いです。

 

ちなみに私は、いわゆる国家Ⅱ種と呼ばれてた時代に(もちろん障害者枠というものはないので普通に試験を受けて)最終合格をもらいながら内定をもらえず、親との取り決めで翌年の4月から働き始めることにした経緯があるので、健常者と障害者の両方の試験の官庁訪問を体験したことがあります。

 

まず問題になっているのがいわゆる「予約戦争」

これ、健常者枠だともっと熾烈です(笑)

年によっても違うそうですが、官庁ごとに方法は違って、予約が必要な官庁と、官庁訪問解禁日以降に官庁に並んで先着順で面接を受ける官庁があります。

予約をしていてもやはり「午前中」とか「午後」の枠とかであって、「午前中」だから昼前あたりに来ると予約していたのにも関わらず締め切ったとか言われて建物に入れてくれませんでした。

予約した人の中からさらに先着順ってことだったみたいです。

 

後者に関しても、夏場で暑い中数時間待たされ、並んでいる間に受付が打ち切りになるところもありました。

当時は私は深く考えないで官庁選びをしていましたが、やりたいことをもっと具体的にして、本当に行きたいところに絞って最大限の努力をしないと面接すら受けさせてもらえないということですね(採用する側からすれば、それも熱意を見る試験のうちだということですが)

 

また、訪問日も一日で終わることは殆ど無く、何日かかけて行っている間に一軍、二軍、三軍、その他みたいにグループ分けされていくので、同じ省に1週間近く通わされることもあるそうです(私はMAX3日でしたが)

 

あとは「スカウト」と呼ばれるものですが、これも個別業務説明会という実質上の面接で有望な人はチェックされていて、本番前にピックアップされて内定が出てることですが、官庁によっては既に採用人数をそれで埋めていて面接は形だけということもあるそう。

 

これも一時期「公務員制度改革」という別の視点から問題になったことがありましたが、政権交代やら何やらでうやむやになってしまったみたいですね。

 

ということを踏まえると、やはり公務員試験も「採用試験」であるからに、何も準備をせずに結果が出なかったら騒いでいるだけの人と、粛々と準備を進めて(目標のために)多少の無理をして頑張る熱意のある人、どちらを採りたいか、どちらが公の役に立つだろうと思うか、は明白だと思います。

 

それでも今回の試験に関しては、大部分の省庁で面接は1日限り(3日ぐらいかけてたところもあったらしいですが)、「スカウト」なしでも面接の頑張りようで十分挽回できる(私自身、個別説明会は有休が少なくて行けませんでしたが、最初の官庁で内定取れました)、予約を取れさえすれば官庁の前で門前払いされることが(ほぼ)ない、と健常者枠よりは幾分配慮を試みた形跡は比較してみると感じ取れます。

 

今回の混乱の大きな要因は、人事院が一次試験の合格者数を採用予定数の概ね3倍弱で出したことだと思われます。

健常の官庁訪問には、概ね採用予定者数の1.5倍~2倍程度の人が進めるのですが、東京都や特別区など自治体との併願も多く、内定決まった人から他の官庁は辞退していくので、例年大きく取り上げられる程には無い内定になる人は出てこないようになっています(だから、内定取れなかった私はよほどということなのですw)

 

また、夏に水増し問題が発覚し、秋から冬にかけて政治サイドでのトップダウンで急遽試験を行うことになったので、既存の試験をベースにして制度設計をするしかなかったということもあるかと思われます。

内定後に人事の方と話をしても、やはり初めてだから要領を得ないし、まさか人事院がこんなに一次を通すとは思わなかったと言っていましたからね。

 

また人事は障害者の採用だけではなくて、4月採用の健常者の配属やそれに対応させるための人事異動、さらには今年度の昇任考査などが重なっているため、この時期に全く初めてのものをやるのは大きな負荷があって、正直予約できなかった人にも申し訳ないとおっしゃっていました。

そういう話も聞いたうえで考えてみると、障害者採用という特殊性のゆえ、辞退者もほぼいないとすれば、なかなか各省庁が多忙の中で動員できる人数では対応が難しかったのではと感じました。

それでも内定が出た時にこれまでに障害を持ちながら苦労して努力してきたことを評価したと仰って頂きましたし、私が受けたところは誠意をもって面接をしていただけました(早い者勝ちと言われていますが、私と同時に受けた10人にちょっと届かないぐらいのグループでは、私と女性1人の2人しか内定が出なかったので、早く来れば無条件に内定がもらえるわけではありません)

 

秋に試験をやるとすれば、試験から採用までの時間があるので、(おそらく)健常者と同じように間に人事院面接が入るのではないかと思われます。

健常者の人事院面接では、明らかに不適格な人を落としながら、官庁訪問に進める人数を調整するという役割を果たしています。

例年通過できない人はそんなにいないのですが、障害者試験でも健常者の試験ではそこまで落とされることのない論文(作文)試験で通過できなかったと思われる人が多いようなので、おそらく官庁訪問に進む前のフィルターとして機能するのではないかと思われます。

 

また、秋には東京都や特別区など自治体の試験もあるので、辞退者も相当出てくるのではないかと思われます。

これに賛否両論ありますが、訪問先を3つに絞る(全部ダメだったら新たに3つ予約できる)という方法を併用すると、採用試験の体を維持しながらある程度は運用出来てくるのではないかと思います。

 

また、そもそも論にもなりますけど、この試験の枠に当てはまらない人の方が障害者には多いのではないかとも思います。

外注化で殆ど障害者が出来る軽作業はなくなってしまったという面もありますが、「採用」の面からなるべく健常者に近い人に来てもらうのか、「福祉」の観点から採用方法や仕事の切り出し方法、流し方まで根本的に変えて、民間では採用しきれない人を採用していくのか。

こういう観点で、もっと議論が必要なものだと思います。

経緯はともあれ、この試験はまだ生まれたばかりの赤ちゃんですから、温かい目で皆で育てていくことが、長い目で見たら一番国民の益にかなうものなのではないでしょうか。

 

一番大事なのは、「採用試験であること」と「障害者の試験であること」をバランスよく考えていくことではないかと、愚考します。