「よし曹田、ビールを飲んで落ち着いたな。で、なんなんだ今日は」

 「うむ。夏木よ、最近治安が悪いと思わんか」さりげなくジョッキをテーブルに戻しながら曹田は夏木に目も向けた。

 「そうだなあ、そりゃあ悪いわさ。あの黄色いバンダナのやつらのおかげで、住吉町ではもう飲めんくなったもん」

 「そのとおりだわ。最近なんて、夜10時回ってあの辺行けんぞ。俺、オデオンとか全然いっとらんもん」

 曹田の問いかけに対して、テーブルの二人の男は声を荒げた。酒の勢いもあってかずいぶん大きな声だ。

 曹田は、青菜と肉を炒めたものに箸をつけながら、二人の愚痴ともつかないような話を聞いていた。その顔は存外に真剣で、半ば瞼を閉じたような表情でじっとしている。

 「とにかくよ、曹田よ。あの黄色い連中を野放しにするわけにはいかんぜ。中スポみたけど、宗教まがいの黒幕がおるっちゅう話だったに」

 「わかっとる。なあ夏木よ。夏目も聞け。酒を置け。箸を置け。肉を飲み下せ。口の端についたチンゲン菜を食え」

 「お前こそバイトの尻を触るのをやめろ。そして、お前こそ俺が話してるこの瞬間に台湾ラーメンを注文するな」

 曹田は軽く笑うと、一気にジョッキを空けた。無言のままもう一杯ジョッキを注文すると、それも一気に飲み干した。

 夏木も夏目も不審な目を向け、思わず互いに顔を見合わせた。

 やがて、空になったジョッキをテーブルに置くや、曹田は一気呵成にこう叫んだ

 「いいかお前ら。俺は、黄色い奴らを誅滅するぞ。このまま放置しとったら俺ら役人の恥だ。民草のために、俺はあいつらを狩ることを始める。お前ら、俺と共に立て。姉ちゃん、『でらうま』ちょーでゃあ」

 曹田は、再び何事もなかったかのように酒を注文すると、箸を持ち直し台湾ラーメンに喰らいついた。

 夏木は大汗をかいた。そして漸く口を開けた

 「本気か?」