映画「サルバドル」 | ニカラオの日々是好日

映画「サルバドル」

1986年に低予算で作られた、オリバー・ストーン監督の名作。

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1970年代から続く、エルサルバドルの内戦を取材する、ちんけなフリージャーナリストが主人公。
この主人公はリチャード・ボイルという実在の人物。
この映画は、このジャーナリストの実際の経験を元に構成されている。

わしは、ようやくこの映画を見た。
もっと早く見とけばよかった。

一部特権階級による経済的利益の独占と、民主的な社会を目指す民衆との血で血を洗う内戦。
それを、金儲けのために取材するジャーナリスト。
しかし、現実のエルサルバドルの内戦状況は金のために働こうとしていたジャーナリストの気持ちを揺さぶり、ジャーナリストとしての良心を目覚めさせるのに十分だった。

内容は、米軍の軍事顧問団やCIAの人間が、いかに人殺し部隊となっていたエルサルバドル軍に肩入れし、大使に中米の「赤化」の不安をあおり立て、軍事支援を強化していったかが、よく分かります。

エルサルバドル軍は、カトリックの司教であり、民衆の支持もあつかったロメロ神父を殺害し、米国から来た修道女(68才の女性を含む)やそのボランティアまで、レイプしたうえに殺害をしている。
これは映画上の話ではなく、実際に起こっている。

このDVDには、当時の駐エルサルバドル米国大使のインタビューも載っているが、米国政府はエルサルバドル政府に、「必要とあらば、米国人の殺害も黙認すること」を伝えていたというのである。
駐エルサル米国大使は、当時のヘイグ国務長官に、「米国人修道女たちがエルサル軍によって殺された」と連絡したが、帰ってきた答えは、「エルサル政府の発表を確認しろ」だったそうである。

当時のレーガン政権のイカレっぷりが、非常によくわかる話である。

エルサルバドルに常駐しているマスコミもエルサル政府寄りもしくは米国政府寄りの報道を続け、米国民に嘘をつき続けていた。
「エルサル政府は共産主義勢力と戦っており、米国はそれに協力している」と言うものである。

米国は1979年にニカラグアでソモサ率いる親米政権を失っており、1980年に成立したレーガン政権が政権のイメージを鮮明にするため、国民を弾圧するエルサル政府を左翼勢力に対する砦としてでっち上げ、支援したということを、当時の駐エルサル米国大使は証言している。



この映画は、これらの事実の上に書かれた脚本で、主人公のモデルとなった本人も撮影に同行させて、再現フィルムのように作られている。
しかし、エルサルバドルの人たちはこの映画に描かれたことを、あまり信用していないらしい。
実際にエルサルバドルで働いていた同期の協力隊員によると、一般のエルサルバドル人は殺害現場から遠ざけられていたらしく、「よく知らない」と答えるそうである。


この映画は、わずか2週間しか公開されなかった映画にも関わらず、アカデミー賞にノミネートされ、オリバーストーンの名を世に知らしめることとなった。
是非お勧めしますよ。
かなりショッキングな場面も出てきますが、それも含めてお勧めします。

ということで、また明日 顔