映画「長い散歩」 | ニカラオの日々是好日

映画「長い散歩」

今日の映画は「長い散歩」


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奥田瑛二が監督した3本目の映画だったかな。

脚本も奥田瑛二。


一人の老人が自分の人生の贖罪として、地獄のような家庭にうずくまる少女を、助けようと「誘拐」してしまうお話。


主演は、緒方拳。

その他、高岡早紀、松田翔太、等。

奥田瑛二も俳優として出てる。



校長も勤めた老人、松太郎(緒方拳)は、仕事に没頭し、家庭を顧みなかった。

妻はストレスに耐えきれず、アルコール中毒から精神的に病み、死亡した。


一人娘(原田貴和子)は、そんな父親を憎み、母親を殺した「人殺し」と罵っていた。

教職を定年退職し、振り返ってみれば、家族を顧みなかったことに強い悔いを感じていた。


松太郎は、家族との苦い思い出が残る家を出て、一人安アパートで暮らし始める。


そのアパートの隣室には、靴も履かず、食事もろくに与えられず、母親(高岡早紀)虐待を受けている一人の少女幸子(杉浦果菜)がいた。

松太郎は、見るに見かねて、少女を地獄のような家庭から、連れ去ってしまう。


しかし、松太郎は少女を誘拐した誘拐犯として、指名手配されてしまう。


松太郎は、少女との旅の中で、徐々に心を通わせる。

松太郎には、少女に見せたい物があった。


まだ、松太郎が家族との絆を保っていた頃、一緒に行った高原からの青い空と雲、そして羽ばたく鳥の風景だった。


そのころ、松太郎を誘拐犯として追う刑事(奥田瑛二)は、幸子の母親の無責任さに、怒りを覚えつつも、松太郎と幸子を追いつつあった。


誘拐犯として追われていることを知った松太郎は、刑事に電話をかけ、「少しの時間をくれ」と懇願する。

しかし、刑事は、松太郎がやっていることは重大な犯罪であり、一刻も早く、子供を帰すように告げる。

その言葉に、松太郎は怒鳴ってしまう。


「この子は、地獄にいたんだ!! 警察ならば、誰が犯罪者であるのか、よく調べろ!!!」


松太郎と幸子は、山頂へのぼり、澄んだ空を眺め、そして、自首するために、山を下りる・・・・





これからラストシーンです。


止むに止まれぬ衝動から、少女を連れだしてしまう老人の行為は、結局は何の意味もありません。

しかし、結果的に意味が無くとも、自分の犯した家族への罪への悔恨と、目の前の少女の地獄のような生活からの救い出すことは、老人の中では、密接につながっています。


少女は、虐待によって言葉すら失いつつありました。

「痛い」

この言葉が、不快な感情を表す唯一の言葉であり、その表情には笑いがありませんでした。


ラストで、自分の無力感にさいなまれながら、少女に別れを告げようと泣き崩れる老人の姿は、無力な一人の人間の象徴であろうと思います。


この映画、2006モントリオール世界映画祭で、<グランプリ><国際批評家連盟賞><エキュメニック賞>を受賞しています。


良質の人間ドラマですよ。

レビュアーの中には、いい映画だけど、おもしろくないと言う人もいます。

確かに、面白みはないでしょう。

しかし、キチンと人の心に訴えかけるものはあります。


奥田瑛二の映画は注目していいと思います。


では、また次回の映画をお楽しみに^^