2021年5月13日

14:30

 

「仮名手本忠臣蔵(かなでほんちゅうしんぐら)」

あらすじはhttp://enmokudb.kabuki.ne.jp/repertoire/2071 へ。

 

〈道行旅路の花聟(みちゆき たびじのはなむこ)〉

*錦之助(きんのすけ)と梅枝(ばいし)の勘平とおかる。全く盛り上がらず。

笠を上げた瞬間に、何一つハッとさせるものがないのだもの。

二人が仲睦まじい恋人に見えるところがなく、それぞれにきちんと踊っているだけ。

 

*錦之助(きんのすけ)と梅枝(ばいし)

梅枝の父親・時蔵(ときぞう)と錦之助は実の兄弟。おじさんと甥の共演。

 

細いからだの鷺坂伴内(さぎさか・ばんない)が出てきたと思ったら萬太郎(まんたろう/梅枝の弟)。伴内というと*猿弥(えんや)の体型を連想してしまうようになっていたので意外の感にうたれる。

彼はよかった。からだごと滑稽で身が弾む。ここでやっと気持ちがほぐれた。

 

*猿弥の体型

市川猿弥は福々しい体型と愛嬌が特徴の役者。そのコロコロとした姿はインパクトが強い。

 

〈六段目〉

菊五郎がからだをぐっと絞ってきていてすっきりとした勘平(かんぺい)。

三月の*直侍(なおざむらい)の時は花道の引っ込みが、ちょっと重くて寂しい気がしたが、今回はみじんもそんな気配はなかった。

 

*直侍

「雪暮夜入谷畦道(ゆきのゆうべ  いりやのあぜみち)

という作品の中の登場人物名

 

お才(さい/京都祇園町の遊女屋一文字屋の女将)の財布をフト目に留めハッとして懐から血の付いた財布を取り出し、右手のキセルをポトリと落すところ、何度も見ているのに胸に迫って*「ああ、勘違いした」という気分になる。それと同時にこの段取りの気持ちの良い間合い。

 

*「ああ、勘違いした」

勘平がイノシシを狙って撃った鉄砲の玉は、斧定九郎(おの・さだくろう)という悪人を撃ち殺した。定九郎はその直前におかるの父、つまり勘平の舅を切り殺して金を奪っていたので、図らずも親の仇を撃ったことになった。しかし闇夜の中での事件だったので、勘平は定九郎の遺体から取った財布を舅を殺して取った金だと勘違いした。

 

母おかやの東蔵(とうぞう)が、勘平が「おやじ様を殺した」と責め立てる迫力、力強くて生々しかった。

 

千崎の又五郎の顔が細くて、ちょっと心配なくらい。声には張りがあったのでダイエットの成功だろうけれど。

 

三人の猟師に、左團次の弟子市川左升(いちかわ・さしょう)、又五郎の弟子中村又之助(なかむら・またのすけ)、菊五郎の弟子尾上菊伸(おのえ・きくのぶ)と揃っていて、良い風貌で並び立っている。

 

 

お客さんの入りは悪く、三階は六割埋まっているくらい。休憩時間に二階の客席を見たら一人しか座っていなかった。トイレに行っているとしても合計数人か?

一階も上手に人はなし。なかなか辛い光景。