11月4日水曜日 18:30
シアターコクーン
10月29日の夕刊に載った朝日新聞の劇評が良かった。
「徹底した娯楽作である一方で、生と死、差別、権力による抑圧への深い洞察がある。」とあり、見終わったらその一言がこの舞台をいい当てていると思った。
長澤まさみのからだの線がきれい。特に長い腕のライン。
西新宿のコンビニで貧しい店員をやっていることにもリアリティが感じられるのだけど、沖縄の霊媒師に繋がる血筋だと言うのも、コケティッシュな魅力で納得できる不思議な味わい。
最後にキラキラな衣装に変えて登場した時、おお!と声が出るほど華やか。舞台の空気を一人で変えられる姿は見事!
秋山奈津子の売れなくなってきた女優の哀感がそこはかとなく感じられて、しかもそれが滑稽な味にもなっている。
特定のお菓子(名前失念)を見ると万引きしてしまうという妙な癖も好きだな。
阿部サダヲのヒデヨシは、俳優養成所にいるとき「男っぽく」と演技指導されると「江戸っ子」になってしまうという癖から抜けられず、おのれの限界を知り新宿二丁目に活躍の場を得たという役どころ。
この設定が随所に生きていて、それがおかしい。
狂言回しとして、ドラッグクイーンと思しき風体の皆川猿時が強烈。
池津祥子の韓国人マダムは、明らかに韓国ドラマ「愛の不時着」のご婦人のパロディだ。
残念なのは、ミュージカルと言っているけど、ワンフレーズも印象に残る音楽が無かったこと。
舞台を見ていてもフリムンの意味がわからなかったのだが、パンフに松尾スズキが「島尾敏夫の小説〈死の棘〉で知った言葉で、”愚か者””狂った人”という意味だ」と書いている。見ていてこれがはっきり分かった方がよかった。