1月27日月曜日 14:00
KAAT神奈川芸術劇場
とても興味深い戯曲だった。ヒトラーがあらゆる手段を使い独裁者としての地位を確立していく過程を、シカゴのギャングの世界に置き換えて描いた1941年の戯曲。
戯曲を書いた時点で、ヒトラーがどういう人物が喝破していたという。
平日の昼ということもあるけれど、観客に男性は一人、二人と見かける程度。 1,262人収容という劇場のほとんどは女性であり、草彅剛ファンではないかな。
全編ジェームス ブラウンの曲に乗せて軽快に進む。
草薙が主人公アルトゥロ・ウイなので、登場した瞬間にもう沸点を越える。2018年6月世田谷パブリックシアター・トラムで「バリーターク」を見た時、草薙の柔軟で大きな動きに引き込まれたのと同じ。
その時、彼に負けず劣らずからだが動いたのが松尾諭。TVでは暗い、偏屈な役を演じていたし、丸っこいからだから鈍そうなイメージを持っていたけれど、舞台で見るとそのイメージを裏切る役者だった。
この彼がロイの仲間エルネスト・ローマを演じる。草薙の横に居ることが多いのだが、ジェームス ブラウンの音に体が小刻みにみごとにリズムを刻んでいるのは彼の方だ。
興行として無理なことだが、松尾がロイを勤めたほうが、戯曲の趣旨を生かせたのではと思う。
最初に登場した瞬間には、観客が「あんた誰?」という目線を送り、ジェームス ブラウンの音楽に乗って、次々と企みがなされていくにつれ、そのリズム感の良さとともに魅了されていく。それがヒトラーに熱狂する民衆の気持ちに重なる、となれば一層面白かっただろう。
最後に「熱狂する庶民をコントロールするのは容易なことだ」といったような意味の字幕が出て来て、拍手を送る観客に突き刺さる。けれどもアンコールに応えた草薙がその字幕を指しても彼の魅力に圧倒されて拍手はさらに大きくなるばかり。
そう言えば、この舞台でシャウトしすぎたせいなのか「ブラタモリ」の四万十川の回のナレーションの声がつぶれていたナ。