5月30日14:30

Harold Pinter Theatr

日本でチケットを押さえた時、この芝居が一番売れていた。

戯曲はハヤカワ演劇文庫で読める。

 

幕開き、二脚の椅子があり、三人の登場人物が佇んでいる。不倫関係にある二人の会話で始まるが、女性の夫は舞台後方で真横を向いて静かに立っている。

中心人物の三人は、その場面に居ない人物が退場せず、ほとんど舞台にいて、静かに気配を漂わす。

この演出が良かった。夫婦と夫の親友、その親友が妻と不倫をしている感情の絡みが目に見える。

元の戯曲は設定した年をはっきりと指定。始まりは1977年としているが、この舞台では年月はテロップで「二年前」「五年前」と写しだされ、時代をはっきりとさせていない。その分、内容が普遍的になっている。地名も旅先のベニスははっきりとそう言っていたが、ロンドンの地名は、聞き取れなかったのかもしれないが、カットされていたようだ。

 

印象的な場面がふたつ。

 

夫が妻に、自分の親友と不倫していることを知っていると告げる場面。正面をむいて並んで椅子に座っている(写真はその場面)。

妻は、夫の話を静かに聞きながら、夫の手から腕にかけてそっとゆっくりと指を滑らせる。許しを乞うている風ではない。繋がりを求めているような仕草。危うくなった二人の関係が壊れない、ぎりぎりの繋がりか。

 

せりふの中に2回も、男が不倫相手の女の、子供を抱き上げ放り上げてあやした話が出て来る。戯曲ではそれだけなのだが、この舞台では最後の方(たぶん第八場。密会場所のアパートでの会話)で、突然5歳ぐらいの子供が飛び出してきて正面を向いて突っ立つ。その子を夫が抱き上げ椅子に座って顔をうずめる様に抱きしめてじっとしている。椅子の乗った回り舞台がゆっくりと、妻と不倫相手のまわりをまわる。

子供の存在が、こんなに効果的に使われるとは意外だった。夫婦関係だけではなく、子供の存在も絡んで、三人の関係が成り立っている。

 

 

おもしろかったのは、夫と不倫相手の親友が食事をするところ。観客は、すでにこの時点で夫が妻と親友の不倫を承知しているとわかっている。

夫は不倫相手にワインを注いでやるのだが、口ギリギリまで注いで知らん顔をしている。肉を切る時に切りにくそうにいらだった仕草をオーバーにみせるが、どちらも笑いが起こるコミカルな演技。その変な様子の意味がさっぱり呑み込めない不倫相手の男の表情も笑いを誘う。

 

実に知的でセンスの良い舞台だった。

 

 

 

〈外国-ロンドン-ならでは…かな?〉

WEBでチケットを買った時、既に残り少なかった。私が買った4列目の席は「前に柱があるので決定的な場面を見逃すかもしれない」という条件付きで安かった。右隣りから5席は空いていたが、パンフとシャンパンまたはアイス付きで高かった。

開演5分ほど前に、私の前の席(同じく柱が邪魔になる)の男性が劇場の案内人に断って柱の前の2列目に移動した。ほぼ同時に私の右隣の女性がさらに右手の人に「この空いている席、お連れさんが来ます?」とかなんとか聞いてから右にずれたので、わたしも彼女にOKをとって右にずれ、柱の問題はなくなり観る事ができた。

最後まで空席に誰も来なかったのでよかったが、来たら元に戻ればいいくらいの感じ。これはよかったな。

ちなみに私の右側の席の人達、誰一人パンフやシャンパンを持っていなかったので、たぶん当日券ディスカウントかなんかで買ったのだろう。