8月29日水曜日 19:00

初台新国立小劇場

 

大竹しのぶ、段田安則、多部未華子、ほぼ三人だけの芝居。

 

面白かった。

地獄に落ちた三人が一室に閉じ込められるだけという状況の中で、話し合っているうちにそれぞれが地獄に落ちた理由が見えてくる。

 

多部未華子は六月に見た「ニンゲン御破算」にも出ていたが印象が薄かった。しかし今回はうまかった。容姿に自信があり自分が一番で、挙句に産んだ子を石で殴り殺して捨てたというのが地獄へ来た理由だが、段田に腕をからめキスをしそうでしない激しい動きをしながら、自分の思い通りにならないイライラ感が全身に出ている。演技に隙が無かった。

最前列で見たので、彼女が舞台端に出て来ると顔のかわいさが目の前に迫ってタマラナイ。本当にそのままお人形さんになる。

 

大竹しのぶは「イヤな女って言われる」と言う通り、嫌味な女の目つき、ずうずうしさがいい。段田を攻めて食いついていく迫力は圧巻。

 

段田は、正義を貫かず姑息に逃げ銃殺刑にあった兵士で元新聞記者役。妻がおとなしいのを良い事に浮気相手を家に連れ込んだことも自慢するような男。それを思うと、もうちょっと粗野な感じの人ではないかなというイメージ。

彼がメキシコへ汽車で逃げたと言うセリフが出て来るが、ブラジルにいるはずなのにどうやって行ったのか?聞き間違いか、それともありえない逃避行ということで笑うところなのか?

 

地獄に閉じ込められていると思っていたのに、一回だけドアが開く。それなのに三人とも出て行かす、自らドアを閉める。この辺りの逡巡に見ごたえがあった。三人で出口近くを激しく動き回り、突き出そうとする人に抵抗する人、結局どうしたいのか結論は出ず、疲れていく。出て行った先に何があるかわからない恐怖も地獄だということか。

 

舞台道具として、アグリッパの胸像とペーパーナイフがあった。ナイフは三人の争いの中で使われ、死んでいるので殺せない凶器ということなのだろうと思うが、胸像の意味がわからなかった。

 

舞台衣装はチラシとは全く違い、大竹は黒のタイトスカートに白い柔らかい生地のブラウス。段田はダークカラーの背広。多部は水色のレースのワンピース。自分のかわいさを見せつける装い。それぞれ役柄にぴったりの選択。衣装は前田文子。