3月6日火曜日 16:30

国立小劇場

 

中村芝のぶ、市川笑野による自主公演。

第一回とは書いてないけれど、是非また次の舞台を見たい。

 

この二人なら出来て当然というところから始まる。期待に違わず、存分に踊りを見せてくれた。

 

チラシと配られたパンフの印刷が凝っていた。後ろの席のおじさまが「こりゃ、金がかかってる」と言っていたが、地模様が光の加減で光るというものだった。

 

「男舞」

市川笑野。

幕が上がると、まずは衣装(水干と呼ぶのかな)がきれいで、背景の幔幕に火炎太鼓の道具と相まって、舞台全面が華やか。

 

大きな袖の扱いが丁寧で、どの振りでもきれいに翻る。

 

唐扇を持った踊りから振鼓まで、やわらかさと華やかさがあって、みとれる舞台だった。

 

「藤娘」

中村芝のぶ。

師匠・芝翫も得意としていた藤娘。芝のぶのかわいらしい容貌にふさわしい一幕。

 

上手下手中央と頭を下げるところ、近年見たことないほど丁寧で心の籠った仕草。

 

早替りで木の幹からひょいと顔を出すところでは、かわいらしくて客席から声があがった。

 

男舞も藤娘もコンチキチの祇園囃子がある。その音に乗って舞うところ、笑野は姿勢正しくキリリと、芝のぶは楽し気で二人の個性が比べられておもしろかった。

 

「道行恋苧環」

お三輪 芝のぶ

橘姫 笑野

求女実は淡海 猿之助

 

猿之助が大けがをして、主催者二人も心配だったに違いない。

 

猿之助は、踊れる人はじっとしていも踊っているという言葉通り、ケガをした左手を余り動かさないで済むような藤間勘十郎の振付でも、ゆったりと舞っていた。

 

芝のぶの登場の足取りの早さはよかった。その一瞬で「あ、この人嫉妬してる」というのがわかった。

 

笑野の橘姫が、姫らしく、そんな嫉妬なぞ知らんふりをして踊っている様な優雅さもよかった。被いている薄絹の扱いが、やはりきれいだ。

 

千穐楽だったこともあり幕が締まっても拍手が止まず、カーテンコールでは、二人並んで座りお辞儀をしていた。

 

これだけ高いレベルの踊りの会はそうそう無いし、ベテラン二人の実力をたっぷり見るためにも、またの機会があると嬉しい。