12月26日火曜日 12:00
国立大劇場

「今様三番三」
雀右衛門の踊りは一生懸命が前面にでる。
源氏の白旗と晒を真横に振るところなど必死。分厚い着物に腕の動きを阻まれているようで、息苦しく見えるのは何とかならないかな。

歌昇、種之助兄弟がきっぱりとした所作で花を添えていた。

「隅田春妓女容性(すだのはるげいしゃかたぎ)」
百両の金の工面に右往左往する芝居。
全くつまらないわけではない。
〈ご存知梅の吉兵衛(よしべえ)〉と副題にあるが、勿論皆ご存知ではないので新鮮ではある。

菊之助が二役早替りで勤める〈蔵前米屋塀外の場〉は、金の取り合いと、姉弟の差し迫ったやりとりのテンポが早替りのテンポに合っていて面白かった。
背中を向けている時にせりふを言う声が録音再生に聞こえなくて、菊之助そっくりだった。どうやったのだろう?

又五郎のどび六が、滑稽。
しかし、どび六の策略がばれる場面で、ひとつ座敷の上手で酒盛り、下手で身受けの金のやり取りと言うのは、一体どういう料理茶屋なんだ?

この場面の幕開きに出てくる女将役の京妙が実にうまい。せりふといい、目の使い方といい、この商売の女そのもの。わずかな出番で場面を茶屋にする力があった。

吉右衛門の吉兵衛が、頭巾に鍵をかける程喧嘩っ早い侠客に全く見えないのが痛いかな。金の工面に誠実に悩むおじさんなのだ。

客席を歩くサービスがあるのだが、吉右衛門が菊之助の懐にある百両をジットリと狙っている暗い場面だったので、客席を歩く吉右衛門の表情がしかめっ面。

一年の観劇の締めに、間近で顔を拝めたので良しとするか。

昼ご飯は外に出て〈おかめ〉で豚うどん。美味しくて温まってありがたい。

これにて一年の芝居見納め。