劇団チョコレートケーキ
作:古川健(劇団チョコレートケーキ)
演出:日澤雄介(劇団チョコレートケーキ)
見応え十分。
父イツハク(岡本篤)が国を守る為に兵役に赴くと言う息子に語りかける「自分より大切な国は無い」。
それに直接あてる訳ではないのに、教師サラ(川添美和)が言う「自衛のための軍備(攻撃)は正当な行為だ」が、ちょっと捻れた表裏一体になっている。
イツハクのせりふにうなづいていると、後でサラの言葉がかぶってきて、せりふの意味が厚みをもって迫ってくる。
サラは歴史の教師として教壇に立つ傍ら、強制収容所の生き残りの声を集めることをプライベートな仕事にしている。
イツハクがアウシュビッツ・ビルケナウの特殊任務の生き残りであることの重要な意味も即座に察する。
この立場に設定して、単純な反戦論者にしなかった古川健の脚本は見事だな。
イツハクが解放された直後のリンチ体験を語るのも、被害者一辺倒の描き方にならず、最後に力強くグイッとひっぱり込まれる。
岡本篤の演技は前半は理性的に抑え込み、収容所の記憶を語るところでは、力技で抑え込んでいる。
だから、たった一ヶ所の叫びがこちらに弾丸の様に飛んできた。