京橋・東京国立近代美術館フィルムセンター
ドキュメンタリー作家・羽田澄子特集より。

「若鮎の巻」
昭和62年の上方の若手役者たちの研究発表会〈若鮎の会〉の指導にあたる仁左衛門を記録する。

一條大蔵譚の一條大蔵卿のせりふ「とっとと 去(い)なしゃませ」という京詞のせりふの言い方に何度も指導が入る。
若手役者はオウム返しに繰り返すが、仁左衛門と同じ発音にならない。

指導にあたる仁左衛門の気持ちには「上方は若手を育てなかった」というのがある。だから関西歌舞伎は消滅しかけたという、過去の苦い経験がもとになっている。

今は無い大阪 浪花座の稽古場の隅で窮屈そうに座りながら熱心に指導する仁左衛門。私心のない、という言葉が浮かんだ。

大阪府立労働センターでの舞台稽古を座席で見ながら振りをし続けている。まったく気を抜いていない。

一条大蔵譚の大道具、火灯窓の奥の絵が座敷ではなくて水辺に一本松だった。こんなのもあるのか。

「芸の巻・上」
仁左衛門の舞台の記録。
伊賀越道中双六の沼津は、平作の住家のところ熟睡。こうなってしまうからDVDにしてほしい。

寿曽我対面の工藤がよかった。この時点で84歳か。彼は最晩年までせりふが淀まなかった。

仁左衛門のご子孫が見に来ていたそうだ。仁左衛門の身内すらDVD持ってないのか?とも思うが、足を運び大画面で見ようという気持ちがあるのはいいな。

毎回、歌舞伎役者関連の映画情報をくれる友人に感謝。