11月16日 18:00 初台新国立劇場 小劇場

浅丘ルリ子 香寿たつき 佐川和正 相島一之4人だけの芝居。あらすじも読まずに見て、とてもおもしろかった。

亡くなった人を、自分のお気に入りの年齢のアンドロイドにして身近に置くことができるようになったという近未来の時代設定。そのアンドロイド製品をプライムと呼んでいる。
親子、夫婦の仲に何かともめ事があって、最後に登場人物4人全員アンドロイドとなって再登場する。その時になって初めて、おだやかで何もおこらない会話が始まって舞台は終わる。

せりふにもある通り、アンドロイドとどんなに話しても会話が一方通行でしかない。登場人物たちはそれに不満と違和感を募らせていく。
その気持ちがじんわりと迫って来る、後から怖さがくる舞台だった。

韓国の美男役者イ・ビョンホンに面差しが似ている佐川和正という役者がうまかった。
開幕すると高齢のからだの弱った女性(浅丘ルリ子)が30代と思しき男(佐川和正)とあれやこれやと話しているのだが、しばらくすると彼のおだやかな微笑みに違和感を感じる。話し終え部屋の外に出て椅子に座り動かなくなることでアンドロイドだとわかる。
この微妙な加減をわずかな手の動きや眼差しであらわす繊細な芝居がよかった。

浅丘ルリ子は、わずかに咳き込みながらせりふを言うので、てっきり本当に風邪をひいているのかと思った。後半、自分がアンドロイドになってからは、スッキリと背筋を伸ばして芝居をしていた。私が彼女の芝居のうまさにすっかりハメられていたのだった。
目と声に常にかわいらしさがあるのは、スターならでは。

見ている途中で「この感じはどこかで…」と思ったのだが、このアンドロイド演技は某国のやんごとない方の婚約記者会見の雰囲気と同じだと気づいた。イヤハヤ。