11月4日土曜日 13:00

池袋芸術劇場プレイハウス

 

演出/イヴォ・ヴァン・ホーヴェ

出演/トネールグループ・アムステルダム(1987年に設立された劇団名)

 

開幕直後は期待はずれだったかなと思わせるテンポだった。

抽象的な美術で、サンドバックが下がっているのでスポーツジムの様な場所でくつろいでいる軍人たち。

その中にいるオセロー役のハンス・ケスティングが、図体のデカイ、もっさりとしたおじさんなのである。いささか魅力にかけるとおもっていたが、この重いからだが後半で俄然生きてくる。

 

美術のすばらしかったところが2点。

デズデモーナが登場する直前の場面転換。三方を囲んでいるブルーのカーテンを巨大扇風機で風を送り、煽りながら外していく。豪快で迫力があって、これから起こる悲劇の前触れとして、こんなにふさわしい転換を見たことはない。(上の写真)

 

もうひとつはデズデモーナとオセローの居間。直方体の全面ガラス張りの箱。真っ白なソファーと金色のヤシの木の様なオブジェが配されていて、豪華なペントハウスだとわかる。

設計図を元に日本で作ったのではなく、船便で運んで来たのだそうだ。

この美術と照明は、ヤン・ヴァースウェイヴェルト。(下の写真)

 

そして最も魅力的だったのが、デズデモーナ役のヘレーヌ・デヴォス。

小柄で華奢な女優で、シルバーのタンクトップにホワイトのワイドパンツというセンスの良い衣装が似合う。

 

殺される所では、オセローがブリーフ1枚でベットに横たわる全裸のデズデモーナに襲い掛かる。

驚くほどきれいなからだをしたデズデモーナが、ガラス箱の中で逃げ回る様は凄味がある。

ここで、最初に印象が悪かった大きくて重いからだのオセローと、デズデモーナとの対比が鮮やかになって悲惨さが強調される。

彼女のきれいなヌードがなかったら、このDVの場面の怖さは半減していただろう。

 

オセローは白のブリーフ、デズデモーナはベージュのショーツだけ身に付けていたが、制約がなかったら、ふたりとも下着なしの本当の全裸のほうがよかっただろう。

 

名前を知られている人がいないこともあって客席はかなり空いていたけれど、観に行って良かった。