10月30日 13:00
池袋芸術劇場
シルヴィウ・プルカレーテ演出。とても一回では覚えられない名前だ。
大道具は廃墟となった病院の手術室らしい。天井から下がった古びた無影灯がちょっとおもしろい感じ。この道具立てひとつで最後まで行く。(写真1)
ビニールを使った衣装もよかった。
リチャード(佐々木蔵之介)が人を殺す時に頭からかぶせて窒息させるように使うのだが、そのリチャードが玉座に座る時、同じビニールを突き破り脱皮するようにして、顔を出しビニールの装束として、それを纏って座る。
この使い方がよかった。
美術と衣装はドラゴッシュ・ブハジャール。(写真2)
佐々木蔵之介のリチャードは、最初の頃こそ杖をついたり、足をひきずったりしているけれど、徐々にそれがなくなってくる。弱者のふりをしているようで、嫌な感じの悪さが出ている。
アン王女は手塚とおる。ほかヘリザベス役の植本純米なども女性役で登場。女性らしい仕草などしないのだけれど、シンプルなロングドレスのラインがきれいで、女性だと認識できる。
その上、リチャードの権力欲が女性征服欲を伴っていないという、この芝居の特色に初めて気づかされた。
リチャードに仕える家臣をハードゲイの扮装にもしていたけれど、アン王女と結婚し、即座に処刑するところなど、女性に無関心だという事が相手役を女形にしたことではっきりと見て取れておもしろかった。
ほぼ最後の場面で、それまでの登場人物が亡霊となって現れ、リチャードに向かって「この世に思いを絶って死ね」とこのフレーズだけを歌い続けるのも耳に残って心地よい。
殺されて終わるリチャードというより、「俺、なんで生きてんだろう?」と思って終わる虚無的なリチャードだった。
渡辺美佐子が狂言回しで出て来たけれど、出番が少なすぎてもったいない。とはいえ年齢のこともあるのかなあ。