6月12日月曜日 16:30

 

「鎌倉三代記 絹川村閑居の場」

つまらない。平板だった。

 

北条時政に抱えられた藤三郎(とうざぶろう)は、時政の娘・時姫(ときひめ)に許嫁(いいなづけ)・三浦之助(みうらのすけ)と縁を切り、彼の老母・長門(ながと)を殺して帰れとの命令を伝える。

一方、三浦之助は時姫に、自分の敵である彼女の父・時政を討てと迫る。

この二人の間で板挟みになって苦しむのが雀右衛門の時姫だ。

 

舞台を見ていても、この構造が見えてこない。

今回、阿波の局、讃岐の局が出てくる場面を前に付けていたが、だからといってわかりやすくはなっていない。

 

雀右衛門の時姫、松也の三浦之助の二人は、似つかわしいきれいな恋人同士だ。

花道七三に出て、セピア色のライトに照らされている時は一幅の画だった。

ここだけはよかった。

 

時姫が豆腐を買って帰って来るところから、最後に長門が時姫に殺されるところまで、主役は時姫で脚本整理して上演できないものかな。

 

阿波の局、讃岐の局

北条時政に仕えている御殿女中で、時姫を案じて帰る様にと説得に来た。時姫はそれを断るので、二人の局は時姫の世話をするため、ここ絹川村に滞在する。

 

「御所五郎蔵(ごしょのごろぞう)」

仁左衛門のために仮花道が設置された一幕。

 

とにかく仁左衛門の五郎蔵(ごろぞう)がカッコいい。

カッとなって皐月(さつき)を責める名場面も、せりふが美しくて、ため息をつきながら聞きほれる。

 

皐月を斬り殺そうと再度花道に登場した時のスピードは爽快。

引っ込むときの早さと連続している。殺しに向かうエネルギーそのもの。

 

雀右衛門の皐月の貫禄に対して、米吉(よねきち)の逢州(おうしゅう)が初々しい。

激している五郎藏の胸に両手を当てて止める形、可愛い手にクッと力が入っていてよかった。

 

仮花道

客席から見て下手にある花道は常設だが、演目により上手にもう一本、仮設の花道を作ることがある。

一演目のためだけの設置である上に客席をつぶすので、同じ演目でもいつも作る訳ではない。

この御所五郎藏を上演する時、ほとんどの場合は仮花道を作らず、舞台上手から出てくる形で上演する。

 

「一本刀土俵入(いっぽんがたな・どひょういり)」

幸四郎の茂兵衛(もへえ)、猿之助のお蔦(つた)。

 

幸四郎の茂兵衛には前半にあわれさがないので、いいとは思わないけれど、猿之助のお蔦と絡むと、現代劇をみているような感じがしておもしろかった。

 

猿之助のお蔦は「酒焼け」という言葉を思い出させる風情。

茂兵衛に物を与えるところも、投げやりな感じで、一時のきまぐれな感じがあってよかった。

 

老船頭の錦吾(きんご)、清大工(せいだいく)の由次郎(よしじろう)、若船頭の巳之助(みのすけ)のトリオの芝居に雰囲気があって、いい場面だった。

老練の二人は当然としても、巳之助は芝居がうまい。ぼおっと遠くを見る目に、ちょっとボンヤリした青年の性格が出ている。

わずかな出番の役でも印象に残る。

 

猿弥の弥八(やはち)、歌六(かろく)の波一里儀十(なみいちりぎじゅう)といい、役者の揃った一幕だった。

 

弁当は三越地下、京たけのうち「加茂のめぐみ」\864。

おいしかったが、イベント販売なので、もう買えない。