5月9日火曜日 16:00

何回か八犬伝をみているが、やはり脚本が悪いと思う。

 

お家再興のため、八人の犬士が様々な難局を乗り越えて活躍する。

敵は玉梓(たまずさ)が怨霊ではないのか。

 

この単純な筋に乗せて、

燃え盛る火の中から現れる犬山道節があり、

芳流閣での犬塚信乃と犬飼現八の立廻りがあり、

庚申山の妖猫退治では犬村大角が活躍するという

たくさんの見せどころが出てくる芝居だとおもう。

 

玉梓が序幕に出てくるだけでおしまいなのである。

彼女の怨霊が邪魔をするから、八犬士は苦難の連続なのだ。

ひとつ見せ場が終わるたびに、悔しがる声だけとか、逃げ去る影だけでもいいから要所要所に出せば、一貫して敵は玉梓の怨霊だとわかるのに、最後の場面で関東管領扇谷定正(おうぎがやつさだまさ)なんぞを敵として出して幕を閉めるから、「あんた誰?」という状態になってしまう。

それに玉梓を勤めた片岡千壽(かたおか・せんじゅ)はきれいだし、芝居もうまいのだから、序幕で消え去るのはもったいない。

 

幕開きから最初の休憩までの1時間半、だらだらと場面が続くので全くお客さんを掴まず、みなさん盛大に寝ている。

この日観劇に入っていたどこかの中学生たちもよく寝ていた。

 

後半、少し持ち直すものの、若手が見せ所をつくれなくて苦戦。

芳流閣では、信乃(しの)役の中村米吉(なかむら・よねきち)の立廻りがヘタ。踊りがからだに入っていないのだろう。右に左に動くばかりでかたちも美しくなく流れがつくれない。ただ、リカちゃん人形みたいに華奢な足がかわいい。

大屋根のがんどう返しは無し。劇場の構造上無理なのかな?

 

 

妖猫退治では上村吉弥(かみむら・きちや)が活躍。とてもキレのある動きをみせる。

上村折乃助(かみむら・おりのすけ)が腹を掻っ捌かれる嫁役。楚々として愛らしい風情がぴったり。せりふもうまかった。お腹を大きくしなかったのはなぜかな?

 

中村鴈治郎(はかむら・がんじろう)の蟇六(ひきろく)。滑稽な様がおもしろい。特に袴に着替える時、クルクル回るすばやさはスゴイ。「心中天網島」の治兵衛の時も感じたが、 彼はからだが動くのだな。

 

彼の息子壱太郎も俊敏な動きを見せる。

扇谷定正に斬りつける時、壱太郎は座ったままの姿勢で妖刀村雨を瞬時に引き抜く。

見せ場なのに、拍手ひとつこなかったのは残念。

 

千穐楽に向かって、もう少しテンポがよくなるかな。

 

夕食は明治座の和風サンドイッチ¥750とあずきアイス¥360

 

*がんどう返し

(強盗提灯(がんどうちょうちん)が自由に回転するところから)

歌舞伎の大道具で、立体的に飾られた道具をうしろに倒し、底面を垂直に立てて次の場面に変化させる方法。(図も日本国語大辞典より)