1月19日木曜日 11:00
通し狂言 雙生隅田川(ふたごすみだがわ)

おもしろかった。
宙乗りや鯉つかみといった派手な演出がショーとして突出せず効果的でストーリーがよくわかった。

市川右團次(うだんじ)の襲名披露の演目なので、彼が大活躍するのはもちろんだが、カリスマ性が強い役者ではないので彼だけを見る芝居にならずアンサンブルがよくて筋が素直に呑み込める。

松若丸、梅若丸を勤めるのは初舞台の市川右近。幼稚園の年長だそうな。かわいくて達者な芝居をするので客席が湧いた。
以前、今の猿之助が同じ役をしていた舞台のビデオを見たが、なんともこまっしゃくれた子役で少々可愛げがなかった覚えがある。

右團次は猿島惣太(さるしまそうた)が一番よかった。
使い込んだ金を償うため人買いをして金を儲けたものの、主人の子・梅若丸だとしらずに折檻をして殺してしまい、これを悔やんで切腹する。
人買いの因業な感じは目つきによく出ていたし、切腹して天井から降る注ぐ小判にまみれている時は浄化されているようだった。
死んでも主家を思う、あまりに強い念が彼を天狗にしてしまったかのようで、惣太の気持ちが一本につながってドラマチックな展開だった。

売り物の三人宙乗りも、再会した母と子がお家再興のために敵の手を逃れて故郷へ向かうのを天狗となった惣太が導くという筋がきちんとわかるので感動的。
かわいい顔で真剣に右に左にと手を振る右近に客席からも皆手を振るので余計に盛り上がる。

最後の本水の中の鯉つかみも、朝廷から預かった家宝の掛け軸から逃げ出した鯉を、再び画中に戻して御家の安泰をはかるものだとわかるから、必死のパフォーマンスにも納得。
豪勢な水の流れは真冬といえども爽快。
舞台前方だけを使った滝の中での立廻りが終わって、舞台奥まで舞台が広がり水が流れてくる大道具の展開は見事。

なかなか見ごたえがあって楽しかった。

昼食はかべすで蕎麦。