1月10日火曜日 11:00
1月13日金曜日 「沼津」幕見
やはり一番よかったのは「沼津」だった。
花道に登場した呉服屋十兵衛役の吉右衛門が「来い、来い、来い」というと愛嬌があふれて、一どきに舞台が明るく暖かくなった瞬間が素敵だった。
中村雀右衛門(じゃくえもん)のお米(よね)に一目ぼれして家に泊まることになり、着ていた道中合羽(どうちゅうがっぱ)を払うしぐさが本当に嬉しそう。
ここから一転、悲劇に向かう。
十兵衛の印籠を盗み損ねたお米のくどき。葵太夫が「十兵衛子細を聞き」と間合いよく語るあたり、吉右衛門の表情に引き付けられる。
一目ぼれした女性に何やら一通りではない背景を感じて気持ちが動く様がよくわかる。
そこから相手を気遣うように吉右衛門が語りだす。竹本からせりふに移るリズムに促されて、こちらも身を乗り出すような気持で舞台を見つめる。
中村歌六(かろく)の平作(へいさく)。
せりふといい背格好といい、今一番平作を演じて見ごたえのある役者ではないかな。笑顔がいい。
前半、その笑顔に魅入っているだけに、後半このか弱いお爺さんの身に降りかかる悲劇がかわいそうでならないという気持ちになる。
幕見(まくみ)は空いていて50人位しかいなかった。
昼の部の最初は染五郎の慶喜(よしのぶ)で「将軍江戸を去る」。
この真山青果(まやませいか)の芝居は、慶喜、山岡鉄太郎、高橋伊勢守の三人に役者を得ないと盛り上がらない。
今回の染五郎、愛之助、又五郎はそれぞれ悪くはないけれど、三人のせりふの味わいに酔い、最後に慶喜が「江戸の地よ、江戸の人よ、さらば」というクサイせりふで歌い上げ感動を呼ぶという訳にはいかなかった。
三津五郎、彌十郎の舞台(2008年に上演された)を思い出しながら見ていた。
「大津絵道成寺」
愛之助五変化(ごへんげ)と副題にあったが、この〈変化〉があまりおもしろくない。藤娘、鷹匠、座頭(ざとう)、船頭、大津絵の鬼と踊り分けるのだけれど、どれもまじめできちんとしていて印象に変わりがなかった。
早替りではないにしても、船頭から鬼に変わる時には、吹き替えの役者が背を向けて長々と踊っていて間延びした。
ロビーに藤原紀香がいたが、ひときわ立派で美人でいやがうえにでも目立っていた。お客さんに写真をせがまれていたが丁寧に頭を下げて断っているのを見て、これを毎日のように繰り返すのは大変だなあと同情してしまった。
1月13日金曜日 「沼津」幕見
やはり一番よかったのは「沼津」だった。
花道に登場した呉服屋十兵衛役の吉右衛門が「来い、来い、来い」というと愛嬌があふれて、一どきに舞台が明るく暖かくなった瞬間が素敵だった。
中村雀右衛門(じゃくえもん)のお米(よね)に一目ぼれして家に泊まることになり、着ていた道中合羽(どうちゅうがっぱ)を払うしぐさが本当に嬉しそう。
ここから一転、悲劇に向かう。
十兵衛の印籠を盗み損ねたお米のくどき。葵太夫が「十兵衛子細を聞き」と間合いよく語るあたり、吉右衛門の表情に引き付けられる。
一目ぼれした女性に何やら一通りではない背景を感じて気持ちが動く様がよくわかる。
そこから相手を気遣うように吉右衛門が語りだす。竹本からせりふに移るリズムに促されて、こちらも身を乗り出すような気持で舞台を見つめる。
中村歌六(かろく)の平作(へいさく)。
せりふといい背格好といい、今一番平作を演じて見ごたえのある役者ではないかな。笑顔がいい。
前半、その笑顔に魅入っているだけに、後半このか弱いお爺さんの身に降りかかる悲劇がかわいそうでならないという気持ちになる。
幕見(まくみ)は空いていて50人位しかいなかった。
昼の部の最初は染五郎の慶喜(よしのぶ)で「将軍江戸を去る」。
この真山青果(まやませいか)の芝居は、慶喜、山岡鉄太郎、高橋伊勢守の三人に役者を得ないと盛り上がらない。
今回の染五郎、愛之助、又五郎はそれぞれ悪くはないけれど、三人のせりふの味わいに酔い、最後に慶喜が「江戸の地よ、江戸の人よ、さらば」というクサイせりふで歌い上げ感動を呼ぶという訳にはいかなかった。
三津五郎、彌十郎の舞台(2008年に上演された)を思い出しながら見ていた。
「大津絵道成寺」
愛之助五変化(ごへんげ)と副題にあったが、この〈変化〉があまりおもしろくない。藤娘、鷹匠、座頭(ざとう)、船頭、大津絵の鬼と踊り分けるのだけれど、どれもまじめできちんとしていて印象に変わりがなかった。
早替りではないにしても、船頭から鬼に変わる時には、吹き替えの役者が背を向けて長々と踊っていて間延びした。
ロビーに藤原紀香がいたが、ひときわ立派で美人でいやがうえにでも目立っていた。お客さんに写真をせがまれていたが丁寧に頭を下げて断っているのを見て、これを毎日のように繰り返すのは大変だなあと同情してしまった。