2017年1月3日火曜日

国立大劇場

 

例年通り平河天満宮にお詣り。いつもある茅の輪が濃い緑色だ。近くで見ると笹の葉のような葉で輪を作っている。材料が変わったのかな。

とにもかくにも今年一年も無事観劇できますようにと手を合わせて来た。

 

10時半場。升を受け取ってするすると入ると酒樽正面の団体の最後列に入った。こんな近くで鏡開きを見るのは久しぶり。

松緑、終始仏頂面。去年、嫁さんに逃げられちゃったみたいだし身辺暗いのかね~。

時蔵、菊之助は機嫌よく笑顔。

菊五郎はいつものことだけれど、ちょっと一杯きこしめしていないかな?と思わせる風体。

ゆるっとした感じが新春らしくてうれしい。

 

以下、長々と感想を。

 

〈若菜姫術譲りの場〉

幕開きの大道具・小道具見事。

海の底に沈んだ釣鐘、風船の魚の群れ。

天井から降りてくる斬新な登場の仕方で現れる菊之助の海女すずしろ。

海に潜ったつもりが、あら不思議、その身は山中に移り、土蜘蛛の精により、自分がただの海女ではなく滅ぼされた一族の生き残り若菜姫であることを知り、

親の仇も教えられる。

さらに蜘蛛の妖術を授けられ、敵討ちと御家再興の旅に出る。これがメインストーリー。

 

〈博多柳町独鈷屋の場〉

「恋湊博多諷(こいみなとはかたのひとふし) 博多柳町奥田屋二階座敷の場」みたいだ。

尾上右近の花魁、出た瞬間からだが大きい!ひとくさりきれいに踊って華やか。

 

〈博多菊地館の場〉

狙っていた〈花形の鏡〉をまんまと手に入れた七草四郎(菊之助)が花道でにんまりとほほ笑む顔が魅力的。

 

〈奥庭の場〉に移って、七草四郎は手に入れた鏡を壊し、正体を現し若菜姫に戻る。

花形の鏡の光で妖術が使えなくなってしまうので、これで敵無しとなった若菜姫。

バッタバッタと斬り合って、赤い蜘蛛の糸を秋作(松緑)に振りかけて消える。

再び現れて今回売り物の筋交いの宙乗り。

七三からは尺八の演奏者が出て来て宙乗りを見送る様に奏でる。簾内の演奏とあわせて異様な雰囲気が出ておもしろい。

左右の壁には大きな蜘蛛の巣が投影されている。これは二階から見たほうが楽しそうだ。

 

〈博多鳥山邸座敷の場〉

「摂州合邦辻(せっしゅうがっぽがつじ)・合邦庵室の場(がっぽうあんじつのば)」みたいだ。

秋作は蜘蛛の糸の毒で容貌が崩れる病に臥せっている。

乳母秋篠(時蔵)は、そんな彼を看病しているが唐突にお前の女房にしてくれ、惚れているのヨと迫る。

客席から笑いが起こるのが合邦とは違うけれど、そこがおもしろい。

 

合邦と同じく色仕掛けはウソで、殺されるための芝居。

「酉の年、酉の月、酉の日、酉の時に生まれた女の肝臓の血」で秋作の病は直るという。

血を飲んで治った秋作はパワー全開でいきなり石の手水鉢を真っ二つに割ってみせる。

ばかばかしさが突き抜けている場面だった。

 

〈錦天満宮鳥居前の場〉

法界坊の大切所作事(おおぎりしょさごと)「双面水照月(ふたおもてみずにてるつき)」みたいだ。

《正月屋》という蕎麦屋が出ている。

茶屋娘・照葉が二人出て来て、あらら?という場面。

 

何の脈絡もなく突如ピコ太郎が出て来てPPAPの替え歌を歌って即退場。たぶん亀蔵。

(後でパンフをみたら謎の参詣人という役名がついていた)

 

〈室町御所の場〉

化け猫にとりつかれた足利狛姫(こまひめ)と化け猫の眷属VS秋作の戦い。

化け猫と若菜姫が手を組んでいることになっているらしいが、ここは化け猫を見せるための脇筋だ。

御殿の床下から〈猫四天(ねこよてん)〉が一斉に出てきたのには驚いた。

初日故か少々流れが悪かったが、なかなか複雑な殺陣がついている。猫たち大活躍。

 

御所が崩れ落ちると屋根には大猫が。

秋作が手にしたピッカリと光る槍でやっつけられる。

死ぬと大猫の首がガクッと落ちる仕掛けも中々のもの。

 

大詰〈島原の塞(とりで)の場〉

若菜姫が先ほどの宙乗りとは逆コース、二階から一階にむかっておりてくる。

止まった真下に座っていたのではからずも(扁平ぎみな)菊之助の足裏をじっくりと拝見することになった。

蜘蛛の妖術を駆使するが、豊後之助(菊五郎)が手にするピカーッと光る花形の鏡(最前壊したのはニセモノだったのさ)を向けられ妖術は破られる。

 

最後の並びに松緑の息子・左近が出てくる。立ち姿もせりふも堂々としていた。

手ぬぐい撒きがあって幕。

 

〈~の場みたいだ〉と書いたように歌舞伎の有名な場面を連想させる構成で破たんがない。

それぞれの場面に見どころも配されていて気楽に楽しめた。

 

昼ご飯は、友人が予約してくれた〈十八番(おはこ)〉の松花堂弁当¥1.600。

長い観劇歴の中、何回目かしらという位久しぶりの大食堂。ゆったり食べることができて、これはこれでなかなかよかった。