5月21日土曜日 13:00
新国立劇場

三部作上演、最後の作品。
見終わると、題名「パーマ屋スミレ」は主人公須美が持ちたいと思って果たせなかった夢の店の名前だったことがわかり、少し物悲しい気持ちになる。
休憩案内までが九州の方言(熊本弁かな?)だった。

有明海に臨むアリラン峠にある理髪店が舞台。壁に一世を風靡した前田美波里の資生堂のポスターが貼ってあるので幕開きは1966年頃か。
そんな時代を経て、堅気のサラリーマンとして今60代を迎えたと思しき男(酒匂芳)が自分の子供の頃を懐かしく回想して芝居が始まると言う構成になっている。

もっとも印象に残るのは炭鉱の一酸化炭素中毒の後遺症に苦しむ後半。

前半でことさらにラブラブぶりが強調される星野園美と森下能幸が演じる夫婦は、夫がほぼ廃人となり生活は困窮を極め、遂には苦しみを見かねた妻が夫を殺す。

南果歩、千葉哲也演じる夫婦は、夫が元気な時は「髪結いの亭主」で、働けと詰め寄る妻との喧嘩が絶えない。
幕開きすぐの夫婦喧嘩で、南果歩がたまりかねて大声をあげる迫力は爽快。

根岸季衣、久保酎吉の二人が最も年かさのカップルなのに、次の時代を感じさせる。
大阪へ出てなんとか生活を続け、天寿をまっとうしたという最後の語りが「焼肉ドラゴン」につながる。

若者、中年、初老、三組のカップルそれそれの事情によるグルグル、グツグツした感情が暑苦しいけど生き生きとしておもしろい。
その暑苦しいやりとりが軽やかに展開するのは、今見ていることがすべて想い出になっているからだろう。

足をひきずる人、屋根に上り景色を眺める人というのが前の二作にも出てきた。
足をひきずるのは重荷を背負っている歩くことの象徴のようだし、屋根はあの世とこの世の結界のように見える。


私は同じ時代を子供として都会で安穏と暮らしていたから、ここで描かれていることは流行歌以外、ほぼ何も知らないでいた。

写真は、舞台装置模型。
もう一枚はロビーに展示してあった国立劇場のコレクション。
過去の芝居のパンフやチケット。
染五郎時代の幸四郎が顔をのぞかせていたのでパチリ。1965年芸術座の「終着駅」という芝居なり。


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