3月20日日曜日 18:30
シアターコクーン

「心中天網島」の小春が修羅道に落ちたのか、初演の享保5年以来夜ごと心中を繰り返しているという設定で、ぼろぼろになった着物姿で登場。七之助演じるこの小春が見事。
疲れ切ってやつれ果てた薄幸な女の姿そのもの。特に濡れたような髪の生え際が色っぽさと哀れさを兼ね備えている。この部分は鬘ではなく地毛に見えた。
最後に早替わりで現代の男になり、白いシャツを纏った立ち姿は鮮やかだった。

残念なのは現代の大阪で売春をしている深津絵里の設定。
リーマンショックで破たんして多額の借金を抱えたまま投身自殺した夫の借金返済のため売春を始めたというが、法的に夫の負の遺産を相続する必要はないだろう、今の日本では。
小春同様、自分ではコントロールできない力で身動きをとれない設定にしたかったのかもしれないが、スタート地点であれ?となっては気持ちが入って行かない。
深津が身を売っている現場に「天網島」同様、客の兄が乗り込んで来て手切金を渡すと言うのも無理があるよなあ。

おさん役の伊藤歩のこらえた表情の演技はよかった。

七之助&深津ダブル主役の一人の設定がおかしいので、ストーリーに納得いかず、最後に七之助が「本当の愛がわかった」などと言うので興醒め。
深津も何かに納得したかのようにポーズをとって幕となるが、見てるわたしはちっともわからない。

無理に「本当の愛」に着地点を求めて破綻しちゃったようだ。
ETERNALと題しているのだから、変に結論つくらなくていいのにな。