2016年1月3日日曜日 
大劇場 12:00

今年も初芝居は国立劇場初日。
まずは平河天満宮に初詣。今年一年、観劇の無事を祈ってから劇場へ。
尾上菊五郎、尾上菊之助、中村時蔵(なかむら・ときぞう)の鏡開きを見て開幕を待つ。
振る舞い酒を一口頂いたあとは、お囃子を耳にしながら賑やかなロビーをそぞろ歩くのは毎年楽しい。


14年ぶりと言う再演。
毎年新たな試みもいいけれど、それ一回きりになってしまって一向にレパートリーの拡大に寄与しないというのを残念に思っていたので、再演はうれしい。

中間早助(ちゅうげん・はやすけ)を勤める市村橘太郎(いちむら・きつたろう)が客席に降りて来たのを見たときに、14年前に見たことを思い出した。同じ役を尾上松助がしていて、「明けましておめでとうございます」と声をかけながら客席を廻っていた時に目が合って会釈したのだった。ヘンなことを思い出したよ。
*中間  武士に仕えて雑務に従った者。
*尾上松助 1月浅草歌舞伎で活躍している松也の父。平成17年に59歳で亡くなっている。

今回の見どころは大詰・第一場「赤坂山王稲荷鳥居前の場」の立廻り。
追いつめられた小狐礼三が妖術を駆使して捕手をたぶらかすところだが、大道具が見事。
伏見稲荷大社の様に連なった鳥居の上に透明なボードが敷き詰めてあって、皆が自在にその上を渡り歩き立ち回りをみせる。
その鳥居は、回り舞台の上に大きなS字を描いた形で置かれている。二階からの眺めは壮観。
花道に立っていた参道を照らす灯篭も小道具としてうまく使われて、鳥居の上で菊之助の小狐礼三を中心に、狐面を付けた面々が灯篭を手に決まった姿はお見事!

この小狐礼三が追いつめられるまでのストーリは、よくありがちなもので、遊女花月に入れあげている若殿・月本数馬之助が、お家(いえ)の重宝「胡蝶の香合」を失くして窮地に陥り、それを救わんとする善人方と御家横領を企む悪人方が、紛失した香合を巡ってあれやこれやと動き回る様が筋になっている。
そいのへんはボンヤリと見過ごしていても一向に構わないのがいいところ。
*お家の重宝 これを失くして探す過程が筋になっている歌舞伎は多い。重宝は「鯉魚の一軸(りぎょのいちじく/鯉の絵が書いてある掛け軸)」、名刀・庚申丸(こうしんまる)など数々あるが、宝の種類の違いは重要ではなく、なんでもいい。

橘太郎の早助が、マイナンバーや五郎丸もせりふに仕込んで笑わせる場面や、つるつるな肌をした尾上右近(おのえ・うこん)の顔に見惚れたり、ちょっとからだが小さく見える菊五郎に、それはそれで長い年月を感じたりしながら正月芝居を堪能。

休憩時間には獅子舞のお獅子に頭をかじってもらい、帰りは隣のホテルで芝居仲間とお茶して、まずはめでたい初芝居をゆるゆると楽しんだ一日でありました。