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8月2日日曜日 国立能楽堂 16:30-18:30
チケットのんびり買ったのに、完売御礼の札が出ていてちょっと驚いた。
鷹之資(たかのすけ)、愛子ともに学習院だそうで、その同級生と思われる子供が大勢いたのにもびっくり。
入場する際、プログラムとお土産に兄妹のイラスト付き一筆箋が配られた。(写真それです)

<藤娘>
高校一年生の鷹之資、初めての女形だそうな。
曲は、*潮来(いたこ)を入れた形で踊った。

橋掛リを出てきた姿はぽっちゃりとしてかわいい。
そのかわいい娘風情を最後まで保って見事。

「松を植よなら有馬の里へ」 あたりだったか、正面に背を向け座って仰向くところ、かなり大きな動きだけれど、しなやかできれいだった。

衣装は富十郎が着たもだのだという。


<雨の五郎>
愛子は母親似で美少女。*プロの舞踊家を志しているからこその舞台だろう、堂々としたものだった。

自慢の長い髪を、三ヶ所結わえた下げ髪にし、袴をはいた素踊り。
角角がきれいに決まる。

どこも揺らぐところがなくて筋のいいことを伺わせる踊りだった。

<安宅>
先日亡くなった*片山幽雪(かたやまゆうせつ)に仕舞を習っていたことから、副題に「先生に捧ぐ」と添えての上演。

謡の声は不安定。まだ声変りが完成していない年齢なのだろう。
しかし足拍子は確か。良い響きだった。
弁慶の力強さが無いのは致し方ないが、黒紋付の素踊りに品がある。

<玉屋>
これも素踊り。
藤娘同様、出てきたときに役の雰囲気をからだから醸し出して、それが最後まで一か所も崩れないのが見事。
玉屋も柔和な顔に、全身軽味があって、ぱっと楽しい気分になる。

人物を演じ分けるというのは、もちろん無理だったけれど踊り切って爽快。

どの踊りも、このまま進んでいけば間違いないと思わせる踊り方で、これからが楽しみ。

インターバルには葛西聖司氏の話。
鷹之資はアーチェリー部に所属しているとか、今読んでいる本は罪と罰で、それを詠み始めた動機は戦艦ヤマトの艦長室の本棚にそれがあるのを見つけて興味をもったとか、
愛子は長い黒髪が自慢で、美容院を経営している母の実家から、それはそれは高いリンスを取り寄せているのだとかいう柔らかい話から、
安宅は<半身をきかせる>ことをこの時期に身に付けるために選ばれた曲であるとか、玉屋では人物の演じ分けをするのが…など舞踊のポイントを鷹之資へのプレッシャーという意味も込めて解説するなど、手際よく聞かせて楽しかった。

客席には千之助、千之助母、尾上右近、金太郎、金太郎母・妹の姿も。


*鷹之資(たかのすけ)、愛子 
故・中村富十郎の子供たち。69歳、74歳の時の子供なのでワイドショーなどで話題となった。

*潮来(いたこ)
藤娘の歌詞に、〈潮来出島の真菰の中に〉で始まる潮来節を加える形での上演形態をいう。

*プロの舞踊家
二代目吾妻徳穂は愛子のいとこ。初代徳穂は祖母にあたるので、プロの舞踊家への道は整っている環境。

*片山幽雪
今年1月に亡くなった能楽師。人間国宝。富十郎とは武智鉄二を介して若いときから親交があった。