1月6日火曜日 15:00 浅草公会堂
今回のチケットは都民半額観劇会の抽選に当たって1等席を手に入れた。座席は選べなくてa花外だったけれど毎年3階席だから間近で見れてうれしかった。
なにより、尾上松也(おのえ・まつや30歳)以外平成生まれの若手役者でまとめた舞台ならではの花と勢いがあって楽しかった。
〈bお年玉 年始ご挨拶〉
中村歌昇(なかむら・かしょう26歳)、中村米吉(なかむら・よねきち22歳)の新年恒例ご挨拶。
米吉、楽屋入前にお店のおばちゃんに声掛けられ、奥から出てきたおじちゃんに焼き芋貰ったそうな。おばちゃんの声色が上手すぎる、おばちゃんキャラだと歌昇に突っ込まれて軽快なやりとり。米吉はトークがソツなくできるね。
〈仮名手本忠臣蔵 五段目・六段目〉
五段目・山崎街道鉄砲渡しの場から二つ玉の場までは、勘平の松也、千崎弥五郎(せんざき・やごろう)の中村隼人(なかむら・はやと22歳)、斧定九郎(おの・さだくろう)の坂東巳之助(ばんどう・みのすけ26歳)それぞれに教わったことをきっちり再現しているまじめな堅い芝居。
松也は暗闇を歩く足遣い、c細引(ほそびき)を使ってきまる形など決まり決まりのところを危なげなく演じていた。
六段目・与市兵衛内勘平腹切の場。騒動が起こる前のゆったりした前半は母おかやの芝喜松(しきまつ)、一文字屋(いちもんじや)お才の歌女之丞(かめのじょう)、ベテラン二人の腕でもたせた。さすがにこの辺りの松也の芝居は段取りを追っているのが見えてしまう。
中村児太郎(なかむら・こたろう22歳)のおかるも同様で戸をひとつ閉めるにも、ちょっと閉めて止めて、又ちょっと閉めて止めて、三回目で締め切って後ろに一歩二歩とよろける、といった手順を説明されているみたいな芝居だ。
しかしd二人侍(ににんざむらい)を迎え入れる切迫した勘平のせりふ「見苦しきあばら家へようこそ御入来(ごじゅらい)」「アイヤ、ずんど些細な内証事(ないしょうごと)」のセリフを強く張ってグッと聞かせた。ここから幕が閉まるまで瀕死の芝居を勢いよく運んで面白かった。
本来、中年の不破数右衛門(ふわ・かずえもん)役を歌昇が勤めた。黙っていると口元が子供っぽいのは致し方ないが、千崎役の隼人と、せりふだけで年配の違いを出していたのは上手かった。
休憩時間に若い男性が「話しがわかって面白れ~じゃん」と言っていたのがなによりだ。
〈舞踊・猩々(しょうじょう)〉
中村種之助(なかむら・たねのすけ22歳)の踊りがこんなに面白く見られるとは思わなかった。
能と同じく特殊な足遣いをするが、実に小気味よく足首がきびきびと動く。上半身もこせつくところが無く大きい。
最後、幕外の引っ込みでは片手で前髪を掴みながらクルクルと回ってe逆七三でピタリと止まり揚幕まで素早く後ずさりして引っ込むまで爽快。
高風(こうふう)を勤めた隼人は背が高いだけに今まで腰が入っていないのが目立っていたが今回初めて腰が安定していた。
〈舞踊・俄獅子(にわかじし)〉
続けて賑やかな打出しの総踊り。松也、歌昇、巳之助の鳶頭。米吉、児太郎の芸者。
俄(にわか)の若衆達が干支・羊の扮装でメイメイ言いながら大勢出てきて、傘を使ったり派手な振付のついた動きをみせるのも全体が生き生きとしてよかった。
幸四郎がとある本で言う通り「花形と言われた若い頃は、若さゆえの美しさや勢いがあって、それが芸を凌駕している」という見本のような舞台。
6時過ぎに終演。そのまま並木藪に行って鴨南蛮\1.900で暖りホクホクしながら帰路に就く。
*付録!古典芸能に馴染みのない方に文中の言葉をちょっと説明。
a花外
舞台に向かって左側、花道の外側の客席を指す。ほとんどの劇場で1等席だが、1等の中では悪い方の席になる。役者は花道に登場し大抵右側を向いて芝居をするので、花外だと背中をみることになるから。
bお年玉 年始ご挨拶
新春浅草歌舞伎の呼び物。舞台上が若手なら、お客さんも初めて見るという方が多い。
そこで歌舞伎役者に少しでも親しんでもらおうと、役者が毎日交代で5分ほどフリートークをする。
今年から初めての趣向で役者二人が掛け合いで楽しく話をしている。
c細引を使ってきまる形
五段目では勘平が猟師をしていて、猪を狙って撃った鉄砲玉が斧定九郎に当たり定九郎は即死。暗闇の中、猪だと思って細引(細い縄)を定九郎の足にひっかけて引っ張ったところで、勘平はきれいな形をとって一瞬動きを止める。
型がある古典芸能では、 この瞬間の役者の姿が決まっているかどうかが見るポイントになる。
d二人侍(ににんざむらい)
六段目では、勘平は五段目で舅を撃ってしまったと思い込み動転している上に姑に責めさいなまれている。そこへ元同じ家中(かちゅう)だった不破数右衛門と千崎弥五郎が訪ねて来る。この二人の侍のことを特に〈二人侍〉と呼ぶ。忠臣蔵以外の芝居で侍が二人連れで登場しても〈二人侍〉とは呼ばない。数ある歌舞伎演目の中でも忠臣蔵ならではの用語。
e逆七三
〈七三 しちさん〉というのは、花道の揚幕から七分(しちぶ)舞台から三分(さんぶ)のところを指す。「逆」とあるように、揚幕から三分、舞台から七分の場所をこう呼ぶ。
今回のチケットは都民半額観劇会の抽選に当たって1等席を手に入れた。座席は選べなくてa花外だったけれど毎年3階席だから間近で見れてうれしかった。
なにより、尾上松也(おのえ・まつや30歳)以外平成生まれの若手役者でまとめた舞台ならではの花と勢いがあって楽しかった。
〈bお年玉 年始ご挨拶〉
中村歌昇(なかむら・かしょう26歳)、中村米吉(なかむら・よねきち22歳)の新年恒例ご挨拶。
米吉、楽屋入前にお店のおばちゃんに声掛けられ、奥から出てきたおじちゃんに焼き芋貰ったそうな。おばちゃんの声色が上手すぎる、おばちゃんキャラだと歌昇に突っ込まれて軽快なやりとり。米吉はトークがソツなくできるね。
〈仮名手本忠臣蔵 五段目・六段目〉
五段目・山崎街道鉄砲渡しの場から二つ玉の場までは、勘平の松也、千崎弥五郎(せんざき・やごろう)の中村隼人(なかむら・はやと22歳)、斧定九郎(おの・さだくろう)の坂東巳之助(ばんどう・みのすけ26歳)それぞれに教わったことをきっちり再現しているまじめな堅い芝居。
松也は暗闇を歩く足遣い、c細引(ほそびき)を使ってきまる形など決まり決まりのところを危なげなく演じていた。
六段目・与市兵衛内勘平腹切の場。騒動が起こる前のゆったりした前半は母おかやの芝喜松(しきまつ)、一文字屋(いちもんじや)お才の歌女之丞(かめのじょう)、ベテラン二人の腕でもたせた。さすがにこの辺りの松也の芝居は段取りを追っているのが見えてしまう。
中村児太郎(なかむら・こたろう22歳)のおかるも同様で戸をひとつ閉めるにも、ちょっと閉めて止めて、又ちょっと閉めて止めて、三回目で締め切って後ろに一歩二歩とよろける、といった手順を説明されているみたいな芝居だ。
しかしd二人侍(ににんざむらい)を迎え入れる切迫した勘平のせりふ「見苦しきあばら家へようこそ御入来(ごじゅらい)」「アイヤ、ずんど些細な内証事(ないしょうごと)」のセリフを強く張ってグッと聞かせた。ここから幕が閉まるまで瀕死の芝居を勢いよく運んで面白かった。
本来、中年の不破数右衛門(ふわ・かずえもん)役を歌昇が勤めた。黙っていると口元が子供っぽいのは致し方ないが、千崎役の隼人と、せりふだけで年配の違いを出していたのは上手かった。
休憩時間に若い男性が「話しがわかって面白れ~じゃん」と言っていたのがなによりだ。
〈舞踊・猩々(しょうじょう)〉
中村種之助(なかむら・たねのすけ22歳)の踊りがこんなに面白く見られるとは思わなかった。
能と同じく特殊な足遣いをするが、実に小気味よく足首がきびきびと動く。上半身もこせつくところが無く大きい。
最後、幕外の引っ込みでは片手で前髪を掴みながらクルクルと回ってe逆七三でピタリと止まり揚幕まで素早く後ずさりして引っ込むまで爽快。
高風(こうふう)を勤めた隼人は背が高いだけに今まで腰が入っていないのが目立っていたが今回初めて腰が安定していた。
〈舞踊・俄獅子(にわかじし)〉
続けて賑やかな打出しの総踊り。松也、歌昇、巳之助の鳶頭。米吉、児太郎の芸者。
俄(にわか)の若衆達が干支・羊の扮装でメイメイ言いながら大勢出てきて、傘を使ったり派手な振付のついた動きをみせるのも全体が生き生きとしてよかった。
幸四郎がとある本で言う通り「花形と言われた若い頃は、若さゆえの美しさや勢いがあって、それが芸を凌駕している」という見本のような舞台。
6時過ぎに終演。そのまま並木藪に行って鴨南蛮\1.900で暖りホクホクしながら帰路に就く。
*付録!古典芸能に馴染みのない方に文中の言葉をちょっと説明。
a花外
舞台に向かって左側、花道の外側の客席を指す。ほとんどの劇場で1等席だが、1等の中では悪い方の席になる。役者は花道に登場し大抵右側を向いて芝居をするので、花外だと背中をみることになるから。
bお年玉 年始ご挨拶
新春浅草歌舞伎の呼び物。舞台上が若手なら、お客さんも初めて見るという方が多い。
そこで歌舞伎役者に少しでも親しんでもらおうと、役者が毎日交代で5分ほどフリートークをする。
今年から初めての趣向で役者二人が掛け合いで楽しく話をしている。
c細引を使ってきまる形
五段目では勘平が猟師をしていて、猪を狙って撃った鉄砲玉が斧定九郎に当たり定九郎は即死。暗闇の中、猪だと思って細引(細い縄)を定九郎の足にひっかけて引っ張ったところで、勘平はきれいな形をとって一瞬動きを止める。
型がある古典芸能では、 この瞬間の役者の姿が決まっているかどうかが見るポイントになる。
d二人侍(ににんざむらい)
六段目では、勘平は五段目で舅を撃ってしまったと思い込み動転している上に姑に責めさいなまれている。そこへ元同じ家中(かちゅう)だった不破数右衛門と千崎弥五郎が訪ねて来る。この二人の侍のことを特に〈二人侍〉と呼ぶ。忠臣蔵以外の芝居で侍が二人連れで登場しても〈二人侍〉とは呼ばない。数ある歌舞伎演目の中でも忠臣蔵ならではの用語。
e逆七三
〈七三 しちさん〉というのは、花道の揚幕から七分(しちぶ)舞台から三分(さんぶ)のところを指す。「逆」とあるように、揚幕から三分、舞台から七分の場所をこう呼ぶ。