小さな「マリモ」が入った小瓶のキーホルダーを
持ってきて見せてくれたことがあった。
丸い緑のふわふわした藻は、見ていて可愛らしく
中のマリモに触れたい衝動に駆られる。
みんなで騒いで見ていると、別の誰かが自分の家の
水槽にもっと大きいマリモがあると自慢し始め
みんなで見に行くことになった。
辿り着いた家の玄関脇に金魚を同じ長細い水槽があり
その中の小石の上に、それはそれはキーホルダーよりも
はるかに大きなマリモがいくつか転がっていた。
「おおー!」
みんなで感嘆の声をあげ感動し、食い入るように
水槽に顔をくっつけ眺めた。
「触ってもいい?」
誰かの声に持ち主は「だめ!」と素早く答える。
「何で~?」引き下がらない子に持ち主は
「人間が触るとマリモは死んじゃうんだから。」
なんと!そんなに繊細な弱い生き物なのかと
当時は素直に信じてしまった。
みんなで優しく眺め、ひとしきり満足して帰宅した。
それから歳月は経ち、ある日テレビで見ていると
本物のマリモは天然記念物で貴重品。
出回っているお土産のマリモの品々は、地元のおばさんが
手で藻をコロコロ丸めて製造している偽物。
しかもそんな手で丸めれるほどの藻なのだから
当時に聞いた触ると死んじゃうはウソだったのだ。
何だか色んな感情が巡りに巡って、いつかマリモを
育ててみたい熱は冷めてしまったのだった。
今となっては、大人な了見になっているので、改めて
人工おばさん丸めマリモでも可愛いものは可愛いので
育ててみたい気持ちになっている。
