昭和40年代、自宅でお手軽に作れるスィーツに
かかせなかったのが「ハウス食品」デザートシリーズだ。
そう、まだ「スィーツ」なんて言葉は知らず
甘い洋菓子は「デザート」だった時代だ。
プリンミクス、ゼリエース、にシャービック。
これらは商品名。
訳せば、プリン、ゼリー、シャーベットだ。
ちょっと大きくなってからフルーチェが出たな。
フルーチェは牛乳にレトルトの中のフルーツソースを
混ぜて冷やすだけなのだが、ヨーグルトともまた違う
ババロアのように固くない、不思議なプルンプルン食感で
固めのフルーツヨーグルトといったところだろうか?
これも独特で美味しくて好きだ。
そのどれもが、市販の粉に水や湯や牛乳を入れて混ぜ
器に入れて冷蔵庫で冷やし固めるだけの代物だ。
子供でも自分で作れる。
ケーキ屋さんから買って食べるなぞ、誕生日やクリスマスなどの
祝い事の時くらいで、めったに買うことはなかったし
近所の八百屋や商店に売ってるはずもなく、駅前まで行かなければ
買うことの出来ないような時代だった。
まだ洋菓子が身近ではなかったが、テレビの中やコマーシャルで
徐々に家庭の中に進出し出していた時代だったのかもしれない。
この頃は、一般家庭に電子レンジやオーブンなどはない。
手作り洋風おやつといえば、蒸し器の蒸しパンとフライパンのホットケーキ。
パンの耳をあげて砂糖をかけたもの。そんなものだった。
そんな時に現れた、このお手軽シリーズ。
世の母親は子供の欲求を満たすため、この粉に感謝したに違いない。
私は中でもこの「シャービック」のイチゴ味が大好きで
夏に食器棚の戸棚に買い置きを見つけると、こっそり
自分で作って食べていた。
製氷皿に入れて作れば、一口大で食べやすいのだが
ある時、欲張ってプリンのカップに作ったことがあった。
出来上がりは大きくて贅沢で美味しそう。
しかし所詮、凍らせた氷菓子。スプーンでほじっても固く
少しずつしか食べれない。溶けてきてカップから出しても
大口開けてかぶりついても、氷なもんだから早々カリカリ
食べることも出来ない。弄くりまわして皿に解けた汁を
すするという、しょうもない食べ方になってしまった。
それからは、プリンカップで作るのはやめた。
欲張りな自分に懲りた。
食べ物それぞれに適した作り方や大きさがあるのだ。
今でも、夏のスーパーの棚に、この箱を見つけると
夏休みの宿題をしながら手をベショベショにして
食べていた幼い自分が、一瞬で現れてくる。
口の中でイチゴ味の懐かしい香りとシャービックの冷たさが広がるのだった。