めくるめく無常の世界『仏典の植物事典』 | 釈迦牟尼スーパースター ~仏教のつれづれ~

めくるめく無常の世界『仏典の植物事典』

前々から気になっていて、去年ぐらいに新装版が出たので
やっと買って読了した本『仏典の植物事典』(八坂書房、満久崇麻著)。
これは、とっても楽しいと共に、仏教観が少し変わる本でした。オススメ!





初期仏典(に限らずですが)、仏典を読んでいると、植物の名前がいっぱい出てきますよね。
でも、インドの植物であるうえに漢訳されてたりして、どんな植物かわからないもの。
それを、植物学者が解説した珍しいものが、この本です。

最初にカラー写真が出ていて、本文では仏典を引用しながら、
その植物が何であるかが解説されているのです。

日本で菩提樹と言われている樹が、お釈迦さまが悟りを開いた菩提樹とは全然別物
(栄西が間違って伝えたとか)といったうんちくもさることながら、
仏教のイメージが体感的にちょっと変わる楽しい本でした。
著者は植物学者なので、仏教に関する記述は間違いがあるのかもしれないけど、
仏典の引用と植物解説というのは本当に読んでて楽しいです。

だってバリバリに熱帯植物なんですもの。

日本でお寺というと、紅葉に竹とかの静謐イメージですが、
仏典に出てくるのは見たこともない南洋植物ばっかり。

お釈迦さまが入滅したときに降ったマンダラーヴァは、
沖縄県花の真っ赤なデイゴだし、
よく仏典に出てきて経典書写の”紙”にもなった多羅樹は
ハワイにでも生えてそうなヤシの樹(オオギヤシ)。

法華経では、そのオオギヤシが七宝でできてるっていうんですから、
どんだけきらびやかな南洋なんだ、って感じです。

絵でいえば、ゴーギャンとか?
日本でいえば、沖縄とか奄美とかの植生に近いんですよね。
奄美の絵を書いた非業の画家・田中一村とか。




この、色と香りのむせ返る豊穣な「有」の世界で、
毎日毎日、花が咲いたり落ちたり、葉が落ちたり、
洪水で流されたり、孔雀が鳴いたり、
というなかで考案された「無常」という実感。
これは砂漠の宗教と違う。
めくるめく無常の世界であります。


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仏典の植物事典