神智学からUFO、陰謀論、「幸福の科学」まで(『現代オカルトの根源』)
面白い本を読んだ。
『現代オカルトの根源 霊性進化論の光と闇』(大田俊寛著、ちくま新書)という本だ。
シュタイナー、テンプル騎士団、ナチス、エドガー・ケーシー、アダムスキー、オウム、幸福の科学・・・・。
霊的に進化した人間と劣った人間、アトラティスなど幻の大陸、UFO、陰謀論・・・。
要するに『ムー』に出てくるようなトンデモ話の根源はなにか?
著者はその根源を、19世紀にロシアの霊媒・ブラヴァツキー夫人が創始した「神智学」に見る。
「人間は輪廻転生をくりかえしながら霊性を進化・向上させ、ついには神的存在にまで到達することができる」。
この「霊性進化論」こそが、神智学から幸福の科学までを貫く核だ、と。そこにはインドの輪廻転生思想がものすごく大きな影響を与えている。
同書では、さまざまなオカルト言説の変遷を追っているのだが、驚くほど似ているのだ。
読んでると気が変になりそう。でも人間って、同じようなことしか思いつかないものだなー。
で、「霊性進化論」の元祖たる神智学は、ダーウィンの進化論によってキリスト教が脅威にさらされたときに出現したという。そういえば近現代オカルトって、「科学では解明できないものがある」とか言いながら、濃厚にエセ科学の要素を取り込んでいる。
面白いのは、筆者がそれを「一笑に付して済ますことが許されるだろうか」と捉えていることだ(同書「おわりに」)。さすが、キリスト教の異端・グノーシス主義の研究者だけある。人はなかなか科学的合理性だけでは生きられない。特に、自分が死んだら跡形もなくなるという事態に人は耐えられないから、「霊性進化論」はずっと生き延びてきたのだろう。
広い意味での宗教的なものと科学との亀裂、それを埋める落としどころとしてのオカルト。
半笑いでスルーされている「幸福の科学」をきちんと分析した本って、珍しいんじゃないでしょうか。
現代オカルトの根源:霊性進化論の光と闇 (ちくま新書)