身長300mの巨大メシアが降りてくる | 釈迦牟尼スーパースター ~仏教のつれづれ~

身長300mの巨大メシアが降りてくる

日本で仏像と呼ばれるものには、大乗や密教の仏・菩薩・天などが入り乱れて、何が何やらわからない。そのなかで、未来仏=弥勒はお釈迦さまの次に昔からいる、つまり初期仏典に登場する。



『新アジア仏教史05 文明・文化の交差点』第5章「中央アジアの仏教美術」(宮治昭先生)には、美術から見る弥勒信仰の話が書いてあって面白かった。



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「弥勒信仰はイラン遊牧民のあいだで強まったらしく、アフガニスタンのカーピシー地方では「兜率天上の弥勒菩薩」の図像が特に好まれている」

脚を交差させる座り方の図像が多い=遊牧民の王侯像もこの形で、それが弥勒に転用されたと推測される。(同書より)

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上生信仰=死後、兜率天に生まれて弥勒に会える

下生信仰=遠い未来(お釈迦さま死後567000万年後)に弥勒がこの世に出現して、みんなを救ってくれる。

という両方があったが、下生信仰のほうがメジャーなようだ。



日本では弥勒菩薩像というと広隆寺のような半跏思惟像のイメージが強い。

でも、中央アジアでは大仏だったという。

というより、大仏を造るようになった源流に弥勒信仰があるそうだ。


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日本の弥勒はこのイメージ


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ガンダーラの弥勒(2~3世紀、平山郁夫美術館)

脚を交差している。


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大仏の造立も弥勒信仰と関係が深い。

10mを越す大仏はインドではほとんど見られないが、インド周辺~中央アジアで大仏が出現し、中国で多く造像され、その多くは弥勒である。

(中略)

弥勒を大仏として造るのはなぜだろうか。

(中略)

世界の繁栄と堕落が大きな周期をもって繰り返され、それに伴って人寿が変化するという考えは、インドの伝統的な考え方に基づいている。この人寿の周期的変化を、仏陀の身長という視覚的な変化に置きかえた経典が出現する。ガンダーラから中央アジアで成立したとみられている『観仏三昧経』がそれで(中略)同経「念七仏品」には過去仏・未来仏の観想法が説かれ、迦葉(かしょう)・釈迦・弥勒の三仏はそれぞれ十六丈・丈六(一丈六尺)・十六丈とされる。 (同書より)

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1丈=3.03m、1尺=0.303mだとすると、迦葉と弥勒=48.48m、釈迦=4.84mになる。

お釈迦さまの時代は堕落した時代なので、仏の背がちっちゃいというわけだ。

同書によると、インドでは4が完全を意味する数字で、その二乗の16(4×4)が特別視されたものであろう、とのこと。


他に、「弥勒大成経」の弥勒は32丈(96.96m)、「弥勒下生成仏経」では1000尺(303m、共に鳩摩羅什訳)と、ますます弥勒はデカくなる。

兜率天から弥勒が降りてくる時代はユートピアで、人間の寿命が8万4000歳で身長5m弱(「弥勒大成経」)なので、仏も巨大ということだ。


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バーミヤンの西大仏(55m、破壊前)は、宮治先生の推定では弥勒だとか。

東大仏(釈迦)よりデカい

お釈迦さまの死後567000年後ということは、今から564500年後ぐらいに降りてきてくれる巨大メシア、弥勒仏。もう少し早く降りてきてくれないものか。

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