地獄図で参拝を勧める仏教説話画
根津美術館(東京・青山)の「国宝那智瀧図 仏教説話画の名品とともに」に行ってきた(2月12日で終了)。
美術館の所蔵品だけなので小規模な展覧会だったけれど、仏教説話画というのはなかなか面白い。文字が読めない普通の人たちに、どうやって絵で仏教を伝えたか、というのがわかるから。
「絵過去現在因果経」(1254年、鎌倉時代)は、お釈迦さまの伝記を、お経と絵で解説した絵巻物。図版は、出家を決意したお釈迦さまが愛馬に乗って城を出た場面。
強烈だったのは「矢田地蔵縁起絵巻」(16世紀、室町時代)
大和郡山市にある金剛山寺(通称、矢田寺)本堂に祀られる地蔵尊の縁起の絵巻物。
パッと見は、地獄図なのだ。
1~12月の一月ごとに、「○月は×日に参拝すると、こんな責め苦から救われる」という文章(詞書)があって、月ごとに獄卒に舌を抜かれたり煮られたりしている亡者の絵がある。横には地蔵菩薩。
要は月に1度は参拝しよう、と勧めているわけだ。
こんな恐ろしい拷問図で月詣でを勧めるとは、なかば脅しのようだが、数多く描かれて流布したそうだ。
洋の東西を問わず、地獄による脅しっていうのは、
布教にずいぶん効果的だったのだろう。
http://bunka.nii.ac.jp/SearchDetail.do?heritageId=218440
(根津美術館所蔵のものは、8月以前を欠失)
この図版はたぶん別本