大唐西域記はおもしろい
『大唐西域記』を読み始めてしまった。
ご存知のとおり、中国の偉大なる僧・玄奘さんが7世紀にインドに旅した記録で、三蔵法師と孫悟空の『西遊記』の元ネタだ。
東洋文庫(平凡社、水谷真成訳)だと全3巻。けっこうな値段になるので、私はその種本である『中国古典文学大系22 大唐西域記』(同)を古本で買ってしまった。版元と訳者さま、セコくてごめんなさい。索引を除いても2段組で463ページ、字が小さいので老眼の人は拡大鏡があったほうがいいかも。
でもこれ、面白いですわ。タイムトリップですわ。
まだ5分の1ぐらいしか読んでないが、難しい教理の話はなくて、この地に行ったらこうだった、という紀行文だ。
「行くこと500余里、○○国へ至る」などと事もなげに書いているが、200km歩いて記述はたった10行ですか!?といった、沢木耕太郎先生ではあり得ないストイックさ。ほとんど人跡未踏の山や砂漠を超えて、現われた国には、大伽藍があって仏教徒がいたり、おかしな格好の外道たちがいたりして、読経の声や街の喧騒が聞こえてくるようだ。
日本のドラマ「西遊記」。夏目雅子は亡くなり、
岸辺シローは車椅子・・・無常だ。
しかも、20世紀の発掘調査で、玄奘が書いたとおりの寺院跡や巨石が見つかっているのだから、研究者はさぞ興奮しただろう。本当に玄奘さんは人類の宝だ。
たとえば、かつて経済も仏教も大いに栄えたガンダーラについてはこう書いている。
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邑里(むらさと)は荒れはて、住民は稀(まれ)で、宮城の一隅に千余戸あるだけである。(中略)
僧伽藍は千余カ所あるが、壊され荒れはて草は生え放題でひっそりしている。多くの窣堵波もすっかり崩れ落ちている。天祠は百をもって数えるほどで、異道の人が雑居している。
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無常だ。