とにかくお経を書き写せ(八千頌般若経その2)
やっとの思いで現代語訳『八千頌(じゅ)般若経』
(中公文庫・梶山雄一訳)の2分冊のうち1冊目を読み終えた。
紀元前後~1世紀に成立したと見られていて、
膨大な大乗仏典のなかでも、最初期に分類されるものだ。
ひたすら「般若波羅蜜すげー般若波羅蜜すげー」と繰り返していて
自分の人生にどう役立てればいいのかは皆目わからなかったが、
最初期の大乗仏教はどんなかんじ?という興味からすると面白い。
悩みに対して答えがほしい人には、お勧めしないけれど。
(以下のブログもお勧めしない)
脳の劣化がすすんでいて、すぐに忘れるので、
気になったフレーズをメモしておこう・・・。
以下は、すべて中公文庫からの抜粋か引用で、
「般若波羅蜜」は「知恵の完成」と訳されている。
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般若波羅蜜(知恵の完成)とは (註より)
3種の意味がある。
・一次的なものとして
主観・客観を離れた不二の知、ひいてはそれを本質とする
仏陀・如来
・二次的に、その目的に到達するための導きとなる書物、
すなわち般若経
・修行の道
般若経典においては、般若波羅蜜はストゥーパ(塔)と
同じように、あるいはそれ以上に、崇拝の対象ともなり、
現世利益を与える呪術・呪文でもある
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前に、5~6世紀ぐらいまで大乗教団は存在せず、
大乗仏教はテキスト(経典)の中だけに存在した(グレゴリー・ショペンさん)、
大乗仏教は経典を制作する運動として起こった、
仏典を書写するようになったことは決定的に重要だ、(下田正弘先生)
というのを読んで感動したが、
なるほどね、というフレーズが、このお経にもたくさん出てきた。
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◆経典そのものを供養せよ!
「仏陀の案内人(知恵の完成)が断絶しないように、
正しい教えが消えないように、また仏陀の案内人が
欠けないことによって菩薩大士たちに助けを与えることになるように」
と考えて、(知恵の完成を)ただ書物のかたちにだけでもして保存し、
安置し、供養せねばらならない。
そしてつねに、花、薫香、香料(略)を供え、また周辺にも燈明や
花環を供えて恭敬し、尊重し、奉仕し、供養し、讃嘆し、祈願し、
さらに種種の供養の仕方によって供養しなければならないのである」
P137
◆仏舎利より経典が大事!
シャクラはお答えした。
「如来の遺骨で、その頂きまでいっぱいに満たされて進呈され
他方で、この知恵の完成が書きしるされて差し出されると
いたしましょう。提供されたこれら二つの分け前のうち、
いずれか一方を与えられるとするならば、世尊よ、
私はこの知恵の完成をとりましょう。(略)実に、これ(知恵の完成)
こそ如来の真正の身体(遺骨)なのです」
(如来の身体は「知の容器」) P128
◆とにかく書き写せ!
(世尊はスブーティ長老に次のように仰せられた)。
「書写するのにたとえ1カ月または2カ月または3カ月かかるとしても、
(知恵の完成は)書写しなければならない。
たとえ1年あるいはそれ以上かかって書写されるとしても、
スブーティよ、かの良家の男子や女子は、この知恵の完成を
書写しなければならないのである」
◆このお経をそしる輩は地獄に堕ちる!
世尊は神々の主シャクラにつぎのように発せられた。
「未来の時代に、その身体は訓練されておらず、
つんぼでおしにも似た、知恵の劣った何人かの比丘たちが
あらわれるであろう。
彼らは「知恵の完成を説いてやろう」といいながら、
そのまがいものを説くであろう。
「物質的存在の無常性とは物質的存在の消滅のことである」
「感覚、表象、意欲、思惟についても同様であり(略)」
このようなものが知恵の完成のまがいものである」
P150
(彼らは、この正しい教えが説かれるのを拒否し、誹謗し、
「この道を学んではいけない」「これは仏陀のことばではない」
というようなことばを話すであろう) P216
→こういうやつらは、腹黒く、黒蛇のたぐいで、地獄に落ちる。
会ったり、ともに住んだりすることは許さない。p220
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梵文『八千頌般若波羅蜜多経』。
ターラの葉139枚に書写されたもの(聖地チベット展)。
大乗仏典は、このお経はすごいという自画自賛と、
このお経をそしるとどんな酷い目にあうかが延々と書いてあったりする。
『法華経』なんかはその最たるものだけれど、、
すでに『八千頌般若経』で見られるスタイルなんですね。
なぜこんなに自画自賛するのか?と不思議だったのだが、
テキストだけが存在の根拠なら、頑張ってしまうのかもしれない。
いろいろなことを説くお経があるのは面白いけれど、
お釈迦さまに罵詈雑言を語らせる演出だけはやめてほしかった。
続きは後日