ストゥーパに酒宴図・男女交歓図とは、これいかに(「ガンダーラ 仏の不思議」その2)
お経などの文献に書いてあることとは別に、
実際に仏教がどう信仰されてきたのか知る上では
考古学的な出土品(碑文とか仏教美術とか)がその証拠になる。
仏教美術を見ると、紀元1世紀ぐらいの大昔からして、
その信じられ方は、私たちのイメージする静謐な仏教とは
だいぶ違うようなのだ。
『ガンダーラ 仏の不思議』(宮治昭著、講談社選書メチエ)
からのメモの続き。
(本には以下の図版がみんな写真で出ている)
・クシャーン時代(AD1世紀~3世紀頃)の仏教美術について。
ストゥーパ(仏塔)の階段蹴り込み部の石板に、よく登場する「酒宴図」。
衣をはだけた男女が酒を飲んだり戯れたりしている。
男女が接吻したり、ちちくりあってる「男女交歓図」もよくある。
・その図像の源流は、かの地でBC1世紀~AD1世紀に
多く作られた通称「化粧皿」と思われる。
図像から見ると、デュオニソス信仰(酒の神・バッカス)に
関するものが多い。酔っ払ったデュオニソスが、ニンフたちや
狂女マイナデスと踊り戯れている。
ギリシア神話に由来する神話的強奪(レイプ)を現したものもある。
その代表例は「アポロンとダフネ」の化粧皿=アポロンが
美少女ダフネの服を脱がそうとし、ダフネが拒んでいる。
ネット上で骨董屋さんが売ってたガンダーラの男女交歓絵皿(上)と
酔っ払ったデュオニソス(下) (本に出ていた画像がないので替わりに)
・ストゥーパに施された「酒宴図・交歓図」などは、
民衆の楽園的なイメージを体現している。
輪廻転生を信じる古代インドでは、エジプトや中国と違って
王などの墓は作られない
(アショカ王でさえ墓が見つかっていない)。
そのなかでストゥーパが作られたのは、
お釈迦さまの骨を治めた墓という位置づけではなくて、
輪廻を脱した理想郷、楽園を意味している。
仏教美術の図像の源流に「神話的レイプ図」というのも驚いたが、
ストゥーパに「酒宴図・交歓図」とはこれいかに。
仏典によると、お釈迦さまは口を酸っぱくして
「欲望は苦のもと」「酒飲むな、修行者はセックスするな」と
説いていたんが、ひとことも通じてないじゃないですか!
良い悪いじゃなくて、それが事実ベースでの信仰の形だとすれば、
大量のストゥーパを作りながら
豊饒・生殖・快楽を良しとする当時の人たちは、、
お釈迦さまのどこをどう”信仰”していたのだろうか?

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