ちゃんとした人が書いた暴露本(「尼さんはつらいよ」)
内容的にも物理的にも軽い本を読もうかなと思って
『尼さんはつらいよ』(勝本華蓮著、新潮新書)を読んでみた。
著者は寺の娘でもなく、広告業界にいて高給取りだったのが、
何の因果か出家した天台宗の尼さん。
研究者として、パーリ仏教専攻で博士号も取っておられる。
尼寺の暴露本として、面白かった。
人間同士集まって、しかも女だけが集まって、
ストレスがないわけがないとは思っていたが、想像以上だ。
これなら俗世のほうがマシだ。
著者も、尼になるのは薦めない、と書いていた。
一番笑ったのは
由緒ある尼寺で家政婦のごとく雑事をやらされていたとき、
初日に精進料理を作ろうとして材料のありかを聞いたら、
冷凍庫のミックスベジタブルだった、
老尼たちの好物は冷凍クリームコロッケをチンしたものだった、という話。
尼さんの中には、この本を読んで憤慨する人もいるでしょうね。
愚痴スレスレだけれど、研究者としてちゃんとした
修行法のことなども書いてあって、勉強にもなった。
読んだあと、不思議とすっきりした。
やっぱ逃げ場はないよね、ということがよくわかったから。
(勝本さんは逃げで出家したのではないですけどね)
当たり前だけど、出家したって何かで稼がなければ食べていけないし、
イヤな同僚(尼・坊主)もイヤな客(檀家等)もいる。
出家しても南の島に移住しても、別の日常が始まるだけのことだ。
逃げ場探しを諦めるのは、爽快なことだ。
「怠ることなく修行せよ」というお釈迦さまの言葉通りに
自分なりの真っ当な毎日を地味に積み上げるしかない。