ベロベロに泥酔する女神像(『インド美術史』) | 釈迦牟尼スーパースター ~仏教のつれづれ~

ベロベロに泥酔する女神像(『インド美術史』)

1年以上前に、古本屋さんのワゴンで投売りされていた
『インド美術史』(宮路昭著、吉川弘文館)を読んでいる。


これ、いい本だわぁ。なんでこれが500円で売られていたのか。

仏教やバラモン教より前、アーリア人が侵入する前の
インダス文明(BC2300~1800円)の美術から、
18世紀のヒンドゥー美術まで、たくさんの図版と共に概説されている。


釈迦牟尼スーパースター ~仏教のつれづれ~


インド美術史

4000円以上の本だが品切れで、アマゾンでも古書が1000円以下


日本で「仏像」ブームとか言われた
仏じゃない阿修羅の像は顔が左右にもある3面だけれど、
インダス文明時代の印章にすでに3面の人物が彫られてるんですね。
仏像どころか、先住民・ドラヴィダ人のアイデアということか。


あと、遺跡をみるかぎり、長いバラモン教時代において
あれだけ濃いヴェーダ(神話)がありながら、
ほとんど造形活動がされていないそうだ。
像や浮彫もせずに、すべてのパワーを儀式に注ぎ込んでいたのか?


写真を眺めていると、
インドの歴史で、仏教やジャイナ教みたいな禁欲的な宗教は
異質なんじゃないの?という気がしてくる。
だってもう、ほとんどがエロティックで、
生命賛歌、ビバ煩悩、という感じなんですもの。


本の表紙になっているのは、

サーンチー遺跡の第一塔東門のヤクシー像。
サーンチー遺跡は最初期の仏教遺跡で、
仏伝図(仏はまだ人物像ではない)がびっちり彫られているのだけれど、一方で、民間信仰の守護神・ヤクシーは、写真のように、
巨乳でクビレもばっちり。どれもそうだ。



釈迦牟尼スーパースター ~仏教のつれづれ~
サーンチー遺跡。浮彫がすごい。


マトゥラー遺跡の2~3世紀頃の柱でも、
裏にはお釈迦さまの本生図(前世物語)が彫られているけど、
表はやっぱり巨乳で半裸のヤクシー像。

マトゥラーには、一連の「女神酔態像」があって、
ヤクシーがベロベロに酔っ払って両側から抱えられていたりする。
同書では「狂躁的な生の鼓動」と表現していた。


釈迦牟尼スーパースター ~仏教のつれづれ~

泥酔する女神ヤクシー。ああ身につまされる


「一切皆苦」とか「不邪淫・不飲酒」とかいう話は、
インドの一般人には、さぞ辛気臭くせーと思われたでしょうね。




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