怖いお釈迦さまVS生意気バラモン青年(長部第3経「阿摩晝経」)
初期仏典「阿含経(長部)」と、大日経・理趣経を併読するという
狂った読み方をしています。
インド仏教の始点と終点を見るようで感慨深いですよ。
本日は『原始仏典Ⅰ 長部経典』(春秋社、中村元監修)メモの続き。
第3経「阿摩晝(あまちゅう)経・・青年バラモンのおごり」。
このお経は、お釈迦さまの隠れた激しい性格が
垣間見られるようで面白いのです。
ポッカラサーティというバラモンが、お釈迦さまの良い評判を聞き、
弟子である青年バラモン、アンバッタに偵察に行かせます。
この青年バラモンが、優秀な若者にありがちな生意気小僧なんです。
まず、お釈迦さまが坐っているのに、
青年は歩いたり立ち止まったりしながら挨拶するというマナー違反をし、その理由を「禿げ頭のにせの道の人は梵天の足から生まれた」という失礼千万なことを言います。
(当時、バラモンは梵天の口から生まれた、とされた)
お釈迦さまはさすがにムッとしたのか、
「アンバッタ青年は修行が完成していない」と言います。
青年はさらに腹を立て、
「ゴータマよ、シャカ族生まれの人は凶悪で、軽薄で、饒舌です。
卑しい出自でありながら、バラモンを尊敬しません。
カーストの四階級のうち、三つはバラモンに奉仕すべきだ」
という罵詈雑言を浴びせます。
ここでお釈迦さまは、
「階級など関係ない。人は生まれでなく行いで決まる」と答えた――
と思うでしょ?ところが違うんですねー。
お釈迦さまは、青年の氏姓である「カンハーヤナ」という姓が、
シャカ族の家僕女(召使)の家系なのだ、と言います。
シャカ族の先祖・オッカーカ王の家僕女が
黒い子を産み落とし、みんなで気味悪がって
「鬼(カンハ)が生まれた」と呼んだからカンハーヤナ族になった、
つまりキミの生まれはもっと卑しいんだよ、青年クン。
そんなふうにお釈迦さまは言うのです。
しかも、「今から質問をするので、不本意でも答えなければ
キミの頭は7つに裂けてしまうよ、青年クン」とまで・・・。
そのあと、軽く青年をフォローしつつも、
「バラモン階級より、クシャトリア(=王族、お釈迦さまの出身階級)
のほうがすぐれている」と断言します
(その理由も言ってるけれど、いまいちよく理解できない)。
さらに、昔のバラモンと比べて、今のバラモンがどんだけ堕落してるか
を指摘します。
怖いですねー、お釈迦さま。
もちろん、仏典のいろんな場所で「生まれでなく行いで決まる」と
言ってるのだから、今回は青年が生まれにこだわったから
生まれで言い返した、とも考えられます。
ですが、ときどき現われる、お釈迦さまの怖さが、私は好きです。
はじめっから慈愛に満ちた善人だったら、
仏教みたいな壮大な人格改善マニュアルを作れないでしょう。
長島茂雄がホームランマニュアルを作れないようなもので。
ちなみに、このバラモン青年は、帰って師匠に報告したら、
「おまえがゴータマを詰問したから、こんなことになった。
ああ、おまえはなんてつまならない知識人か」といって、
師匠に足で蹴られてしまうのだから踏んだり蹴ったりですね。

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