「神」と「狂」が至るところに出てくる(『たそがれ、遥かに』) | 釈迦牟尼スーパースター ~仏教のつれづれ~

「神」と「狂」が至るところに出てくる(『たそがれ、遥かに』)

仏教は出てこないのですが、今読んでいるエリ・ヴィーゼル
たそがれ、遥かに』(人文書院、前田直美訳)。


作者(1928~ )は、現ルーマニア生まれのユダヤ人で、
戦争中にアウシュビッツに送られて生き延びた人です。
この人の政治的なスタンス云々や、
作品の全体像はすっとばしまして、

以下の抜書きは単に自分のためのメモです。


釈迦牟尼スーパースター ~仏教のつれづれ~ エリ・ヴィーゼルさん


この本は、「神」と「狂」という文字が100回ずつぐらい出てきて、
至るところにビンビンくるようなフレーズがあるのでした。

まずトビラに書かれた言葉。

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狂人がいなければ、世界は存続しなかっただろう

マイモニデス

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く~~。
マイモニデス(1135~1204)とは、スペインのユダヤ教ラビで、
迫害のなかでイスラムに偽装改宗して、そののち、ユダヤ教の
指導者として生きた人だそうです。


冒頭、主人公の独白部分。

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眠っているときには、あらゆるものが安定している。
ところが、ぼくは不安定の方が好きだ。
秩序ある世界のなかで意識が生まれ、広がって燃えたち、
この秩序が偽りだと告発するのを見るのが好きだ。
強固に見えるあらゆるものを揺るがす、狂った老人の話を聞くのが好きだ。
石の上の石がぐらつき、屋根の上の空がぐらつき、道路の上の屋根が
ぐらつき、舗石(しきいし)の上の道路がぐらつき、墓の上の生者がぐらつく。
思考についての思考がぐらつき、記憶に関する夢がぐらつき、
臨終の人の涙に対する祈りがぐらつく。

(同書21-22P)
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あら?お釈迦さま(や龍樹さん)の言葉から感じる、
強烈な解放感と似てるじゃないの?

「強固に見えるあらゆるものを揺るがす」
「この秩序が偽りだと告発するのを見るのが好きだ」
「思考についての思考がぐらつく」


ここで主人公が吐露しているのは「神への不信」です。

ホロコーストで、神を信じる民族が滅ぼされようとしているそのとき、

あんたはどこで何をしていたんだ? なぜこんなことを許したんだ?と。


(つづく)



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