つれない人・お釈迦さま(中部経典142経「施分別経」)
お釈迦さまは、つれない人です。
いくら思慕しても、いくらお布施を積んでも、
満面の笑みでハグしてくれたりはしません(お経に残された限りではね)。
だから、お世話係でいつもお釈迦さまにくっついてるアーナンダに、
みんな嫉妬したんじゃないですかね。
そんな、つれないお釈迦さまのエピソード。
中部経典・第142経「施分別経」(布施の解説)。
マハーパージャティー・ゴータミー(お釈迦さまの生母の妹、育ての母)が、
自ら紡ぎ自ら織った新しい布を持ってきて、
どうかお釈迦さま個人に受け取ってほしいと言います。
ですがお釈迦さまは
「ゴータミーよ、教団に与えなさい。あなたが教団に与えるならば、
まさにわたしが供養され教団も供養されるのです」と、個人では受け取りません。
マハーパージャティー・ゴータミーが3回頼んでも、
お釈迦さまは自らは受け取りませんでした。
こういうときにいつも、とりなし役になる心優しきアーナンダが
「尊師よ、まぁそう言わずに。
あなたを母乳で育ててくれた彼女が頼んでるんだから
受け取ってあげたらどうですか?」みたいなことを言っても、
やっぱりお釈迦さまは首を縦には振りません。
そこでお釈迦さまは、お布施の序列を解説します。
(1)個人に対する布施には14段階がある。
(如来への布施が1番、独りで覚った人への布施が2番・・・に始まり、
凡夫への施しが12・13番で、動物への施しが14番)
要は、徳の高い人に施すほど功徳が大きい。
(2)教団に対する布施には7段階ある(細かくは省略)。
でも、最低位の教団への布施であっても、
個人への布施よりも功徳がある。
面白いのは(1)で言うように、「誰々に布施したい」という
ご指名ができたということですね。別の本に書いてありましたが、
人気がある比丘は指名の布施が入ってリッチになり、
不人気比丘は貧乏だったというから、出家生活も楽じゃありません。
もちろん指名NO.1は、お釈迦さま自身でしょう。
でも個人よりも「教団への布施」を推奨するのをはじめ、
リッチ比丘とプア比丘の格差をなくすような仕掛けが
いろいろとあったようです。
それから、註に書いてあって面白かったこと。
(2)では、布施の序列が、男女教団両方→男教団→女教団という順で
功徳があるとされているのですが、これはおかしな話です。
なぜなら、この時点でまだ女性の修行僧はまだ一人もいないはず。
最初の女性教団は、マハーパージャティー・ゴータミーほか500人とされています。
マハーパージャティー・ゴータミーが出家したいと懇願しても、
お釈迦さまが「女性はなぁ・・」となかなか認めなかったのを、
アーナンダが「まぁそう言わずに」ととりなして、
500人の女性とともに出家したのが、初めての女性教団とされています。
とすると、この「施分別経」の段階で、マハーパージャティー・ゴータミーは
まだ在家だから、「女性教団」は存在しないではないかーーというのが、
註釈のいうところです。
あとでお経に手を加えて、
矛盾が出てしまったのかもしれませんね。どうなんでしょう。
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