お釈迦さまは初心者に何から話すか(中部56経「優波離経」その2)
昨日の阿含経中部56経「優波離経」の続きです。
ジャイナ教徒のウパーリが、お釈迦さまに帰依したいと申し出て、
そのときお釈迦さまがどういう順序で説法をしたか。
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そこで世尊は家主のウパーリに順次に進展していく説法(次第説法)を行った。
すなわち布施の説、戒の説、天界の説、欲望の災禍と害悪と汚れ、
厭離の利点を明らかにした。
世尊が、家主のウパーリの心が従順で、柔軟で、こころの蓋いがなく、
こころが勇躍し、こころが明澄となっていることを知ったとき、
諸仏が賞賛している説法を、すなわち苦と原因と消滅と道とを明らかにした。
『原始仏典 中部経典Ⅱ』(春秋社、浪花宣明訳)
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この「次第説法」は、阿含経典の中に何度も登場しますが、
どれも順序は同じようです。
「殺生してはいけない」に始まる五戒や、「来世で天に生まれる方法」や、
「欲望は苦しみのもとだ」といった
わかりやすいことからまず話しているんですねえ。
それで、「こいつはわかる」と思ったら、
「苦と原因と消滅と道」つまり四諦の話をしている。
この順序は、理にかなっていますよね。
まだ文字の仏典がないわけですから、もしかすると、
在家信者で四諦を聞かずじまいだった人がいるのかも??
いま巷にある解説書などで、
いきなり「生きることは苦です」と来るものもあります。
いきなり「苦」と言われも「は?」と思う人も多いでしょう。
仏教の根本だからって、最初に言えばいいってもんでもないわけですよね。
面白いのは、お釈迦さまが最初に説くのが「布施の説」。
煎じ詰めれば「僧団にお布施をするのは功徳であって、
あなたにいいこと(善果)がありますよ」という話ですよね。
もし現代の日本で、開口一番この話をしたら?
「なんだよ、ガメツイ坊さんだな」「怪しい教団だな」と
思われるのが関の山でしょう。
今の日本、お布施=功徳という考え方がないですからね。
ウェブやイベントでがんばって布教している、あるお坊さんが言ってましたが、
結局収入源は檀家さんの法事や葬式や墓地経営で、
布教活動はカネにならないどころか持ち出しだそうです。
講演や書籍購入で小銭しか落とさない無党派層の仏教ファンに
「葬式仏教」だとか批判されても、
じゃあ坊主はどうやって食えというのか?って片腹痛いのではないでしょうか。
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