恐怖にとらわれたとき(中部経典1~4経) | 釈迦牟尼スーパースター ~仏教のつれづれ~

恐怖にとらわれたとき(中部経典1~4経)

『原始仏典 中部経典』を読み始めたので、その備忘録です。
(しかし原始という言葉はイメージ的にどうなんだろうという気もしますが)
釈迦牟尼スーパースター ~仏教のつれづれ~

本日は

第一経 根本法門経・・・根本にあるもの
第二経 一切漏経・・・・漏煩悩を捨てる
第三経 法嗣経・・・・・法を相続する者
第四経 怖駭経・・・・・森に独り住む


いずれも、ストーリー性はないものの、お釈迦さまの教えのメインストリームが
直球で説かれていました。


<印象に残ったところ>

◆第一経 根本法門経

たとえば火を知覚した場合、凡夫・有学の比丘、阿羅漢、如来でどう違うか。
私の勝手な解釈では、


凡夫の会話
「あ、火だ」「やった!暖まっていこうぜ」「枝につけて家に持ち帰ろう」
「あれ、うまくつかないぞ」「くそっ、風で消えちゃったよ!!」


阿羅漢の会話
「火だね」「そうだね。それがなにか?」「いや別に・・・」


阿羅漢、如来は何かを知覚しても、喜ばないし、「わたしのものだ」と考えない。
このお経は、同じフレーズが地・水・火・風・有情・神々などについて繰り返されます。
そして最後の1行は、
比丘たちは世尊が述べたことに大歓喜した」。

この最後の「大歓喜した」「おおいに喜んだ」というのは、
お経の最後にくる定型フレーズです。


ところが、註を読んで驚きました。
シャム版やビルマ版の最後の1行は「比丘たちは大歓喜しなかった」。

なんか飲みながら読んでいたら、ブーッと噴き出しそうです。
500人の比丘たちは、お釈迦さまの言葉を理解できなかったというのです。


定型フレーズわざわざ変えてそんなオチにするとは、
正直というかなんというか。


実際ね、お釈迦さまの話が深遠すぎて、周りがみんなポカーンとしていた、
ということは多々あったのではないかと思うのですよ。



◆第四経 怖駭経


これは身につまされました。人はなぜ恐怖を感じるのか。

街から遠く離れた森の中で、獣や悪魔が跋扈するなか
たった独りで住んで瞑想するのは、恐ろしくて耐え難い。
お釈迦さまでさえ、修行時代は耐えがたかった。



釈迦牟尼スーパースター ~仏教のつれづれ~  魔に襲われるお釈迦さま(アジャンタ)



では、どういった「心の欠陥」が恐怖を招くのか?


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1. 身の行いがよく浄められていない
2. ことばの行いがよく浄められていない
3. こころの行いがよく浄められていない
4. 生活がよく浄められていない
5. 貪欲があり、もろもろの欲望にはげしく染まっている
6. 心が害されていて、意の思惟が汚されている
7. 沈欝と気怠さ(けだるさ)にまといつかれている
8. 浮ついて心が定まらない
9. 疑いをもち惑いをもっている
10. 自分をもちあげ、他人をさげすんでいる
11. 恐れおののき、恐怖を生じる
12. 所得・尊敬・名声を求めている
13. 怠けて精進を怠っている
14. 失念し、正知を欠いている
15. 精神統一せず心が混乱している
16. 智慧が劣っている
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私たちは恐ろしい森に独りで坐りはしないけれども、
漠然とした恐怖にいつもさらされているような気がします。

職を失って路頭に迷うんじゃないかとか、
実はすべてが自己満足で自分は「痛い人」なんじゃないかとか、
こちらが思慕していてもあちらでは迷惑なんじゃないか、とかね。
ものすごく鈍感な私でさえ、そこはかとなく何かが怖い。


その恐怖を何が招いているかといったら、
お釈迦さまがあげた上の16個は、現代でも同じような気がします。
とくに7,8,9,10あたりは身につまされました・・・。


それでは恐怖がやってきたとき、お釈迦さまはどうしたのでしょうか?

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「わたしはこう思う。
さあ、これはあの恐怖がやってくるのだ』と。(中略)
経行しているわたしのところに、その恐怖がやってくる。
そのわたしは、ひたすら経行し続けたままでその恐怖を追い払うまでは
決して立ち止まらず、坐らず、横たわらない」
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坐ってるときに恐怖がくれば、立ち去るまで坐っている、
横たわっているときにくれば、立ち去るまで横たわっている、と書いてあります。

少なくとも、これから何かの恐怖に囚われたとき、
森にたった独りで坐っているお釈迦さまを思い浮かべて
さあ、あの恐怖がやってくるのだ」と言ってみようと思います。


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