国の治め方を説く珍しいお経(金光明経1)
しばらく休んでいた大乗仏典斜め読みを再開しました。
駆け足で解説するこの本は、密教ファンには不評でしょうが、
全容をざっくり眺めるぶんにはよさそうです。
本日読んだのは、4世紀頃の成立とされる
「金光明経」(スヴァルナプラサーバ・スートラ)です。
そのものズバリの密教経典ではないですが、
密教の特徴であるダーラニー(陀羅尼=呪文)がたくさん出てきて、
法華経から密教に移行する中間のお経と捉えられるそうです。
「金光明経」の一番の特徴は、
「国を治めるにはどうしたらいいか」が説かれていることです
(正論品第十一)。
「仏・菩薩の神通力や威神力で国を護るのではなくて、
ブッダが教えたような正しい道理に従って国王が国を統治するならば、
ヒンドゥー教や一般民間信仰で認めているような神々が、
その国王または国土を守護するのである―ということです」
(同書解説より)。
この「金光明経」はインドではマイナーだったけれども
中国・日本・チベットなどではとても重用されたそうです。
「我」に実体がないと言っている仏教にとって、
もっと実体のない「国家」なんかどうでもよさそうですが、
一方で、インドでも古来、お釈迦さまと転輪聖王(架空の理想の王)を
オーバーラップしていたわけですし、
仏道で国がうまくいくという信仰は最初からあったのでしょうね。
サンスクリット原文では、
国王が正しい政治を行う→神々が加護し、雨風の自然現象も順調になる。
それが、漢訳(曇無識による)だと、
国王の力で神々を加護せしめ、雨風を順調ならしめる、と微妙に変化するとか。
「これは、国王が自然現象をも支配しうるという
中国の伝統的な災異説の思想に基づいているのでしょう」(同書解説より)。
そして、日本のように、国策として仏教を輸入した国には、
この「金光明経」はぴったり。
たとえば聖武天皇が8世紀に、全国津々浦々につくった「国分寺」は、
正式名称が「金光明四天王護国之寺」なんですって。知らなかった。
政治がダメだから転変地異が起こるんだよ、ということは、
「金光明経」に基づいて日蓮上人も怒っていましたね。

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